枝条を含む連続する4以上の条の移動〜その3

2011年3月26日付け記事「枝条を含む連続する4以上の条の移動〜その2」に、次のようなコメントをいただきました。

改め文は、記載の順序の通りに順次適用していくものと理解しています。
そこで、一部改正の施行前に「71条、72条、73条、73条の2、……」という条文の並びになっていたとします。
すると、「第73条の2を第76条とし」の適用により、条文番号が「71条、72条、73条、76条、……」のように変わります。
次に、「第71条から第73条までを2条ずつ繰り下げ」の適用により、「73条、74条、75条、76条、……」のように変わります。
ということで、疑義が発生しないように思われるのですが、いかがでしょうか?
逆に、仮に「第71条から第73条までを2条ずつ繰り下げ、第73条の2を第76条とし、」のような改め文を書いてしまうと、前述の順序性により問題が生じることがあるような気がします。

これに対し、次のように返答させていただきました。

私は、改正内容が法令に溶け込むのは同時であると理解していますので(http://d.hatena.ne.jp/hoti-ak/20070706)、「改め文は,記載の順序の通りに順次適用していくもの」という考え方はよく分かりません。
いずれにしろ、枝条を含む連続する4以上の条の移動は1条ずつ行うべきということは、必ずしも改正内容がどのように溶け込んでいくかということとは直接関係がないと思っています。分かりにくいかもしれませんので、その辺りのことは、また改めて取り上げてみたいと思います。

今回は、この返答の追記になります。
私が枝条を含む4以上の条の移動は1条ずつ行うべきと考える理由は、上記の例の場合、「第72条」は、2条繰り下げることによって「第74条」になるものと考えていますが、改正前に「第73条の2」があるため、「第73条の2」になってしまうという考え方もできると思うからです。これは、改め文を「第73条の2を第76条とし、第71条から第73条までを2条ずつ繰り下げ」と書こうが、「第71条から第73条までを2条ずつ繰り下げ、第73条の2を第76条とし」と書こうが、違いはないでしょう。
ただ、この辺りは、感覚の問題であることも事実です。連続する4以上の条の移動、例えば第2条から第5条までを第4条から第7条までとする場合には、「第5条を第7条とし、第2条から第4条までを2条ずつ繰り下げ、……」とし、「第2条から第5条までを2条ずつ繰り下げ、……」とはしませんが、後者の改正方法が一般的であれば、特に疑問も持たずにその通りやっているだろうと思います。事実、次の例のように、法律でもそのような改正方法をとっていたものもあります。

農業協同組合法の一部を改正する法律(昭和29年法律第184号)
   (略) 
第8条及び第9条を削り、第2条から第7条までを2条ずつ繰り下げ、第1条の次に次のように加える。
   (略)

したがって、上記の例で「第71条から第73条までを2条ずつ繰り下げ」とすれば、「第72条」は当然「第74条」になるという考え方もあり得るとは思います。
結局のところ、改め文をどのように書くのかは、正確性と合理性を併せ考えて行うことになります。したがって、連続する4以上の条を移動する場合、正確性を考えると、1条ずつ移動するのが本筋なのでしょうが、合理性を併せ考えることによって、現在のような改正方法としているのでしょう。そして、枝条を含む連続する4以上の条の移動を行う場合にも、できる限りその改正方法と整合がとれたものとすべきです。
そうすると、第2条から第5条までを第4条から第7条までとする場合に、「第5条を第7条とし、第2条から第4条までを2条ずつ繰り下げ、……」としていることから考えると、最初に「第5条を第7条とし、……」とすることで、第5条を2条繰り下げるということも表しているので、「第2条から第4条までを2条ずつ繰り下げ」と書いても疑義が生じないと考えているように、私は思うのです。
したがって、第71条から第73条の2までを第73条から第76条までとする場合には、最初に「第73条の2を第76条とし」と書いても、2条繰り下げる意味までは持たないということから考えても、1条ずつ繰り下げるべきではないかというのが現在の私の考えになります。
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