自治体の区域が変わった場合の罰則に関する経過規定

ある者がA市の罰則規定を含む条例に違反したが処罰される前に、その違反をした場所を含む区域がB市の区域となった場合に、その者をなお処罰すべきと考えるときは、どのような措置を講ずるべきだろうか。
以前、ある県において、屋外広告物法に基づく条例で規制をしていた区域を含む市が中核市となり、当該区域は当該市の条例で同様の規制をすることとしたのだが、その際、当該県の例規にも当該市の例規にも、特段の経過規定等を設けなかったため、地検から経過規定等を設けるべきであると指摘された例があると聞いたことがある。このときに、地検は、その経過規定等を県の例規で設けても、市の例規で設けても、処罰できる根拠があればよいというような感じであったようである。
しかし、この場合は、素直に県の条例における効力をどのようにするかの問題と考え、県の例規において所要の経過規定を置くべきだろう。
では、冒頭の事例では、A市の例規で経過規定を置くべきか、それともB市の例規で所要の措置を講ずるべきだろうか。上記の中核市への移行の例と同様に考えると前者とするべきのようにも思われるが、私は、後者とするべきであると思う。
なぜなら、例規の効力における属地主義の考え方からすると、ある者が実際に違反行為をしたときの場所がA市の区域であっても、その後B市の区域となった以上、当該区域における違反者の処罰をどのようにするかは、あくまでもB市が判断すべきではないだろうか。このことは、やや事例を異にするものの、沖縄が我が国に復帰した際に、アメリカの施政化において制定された法令の効力をどのようにするか我が国の法律で規定したことが参考になるのではないだろうか*1
ちなみに、上記の中核市への移行の例は、中核市になったとしても当該市が当該県の区域であることに変わりはないので、県の例規で所要の経過規定を置くこととしても属地主義云々の問題は生じることはない。

*1:沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律(昭和46年法律第129号)第25条が罰則に関する経過規定となっている。