「つくろう議員提案の政策条例」

松下啓一先生から、御著書『政策条例のつくりかた』を送っていただきました。ありがとうございました。
この御著書には、議員提案による政策条例のつくり方について、その現状も含めて具体的に記載されています。
私は、議員提案の条例というものをあまり評価していませんでした。現在は、執行機関提案の条例であっても、住民の意見を聴く手続を行うことが一般的であるので、議員提案の条例にそれ程意味があるとは思えず、議会が議会不要という批判をかわすために行っているに過ぎないのではないかと思っていたのです。
しかし、この御著書のはしがきにある次の記載は、私の考えを変えつつあります。

このままでは、地方議会・議員は、多元的な価値を体現し、多様な市民の思いを代弁する機能を失ってしまうのではないか。ここで踏ん張らないと、価値の相対性を基本原理とする民主主義が崩れてしまうことになるのではないか。これが本書の問題意識である。 
踏ん張る試みのひとつが、地方議会・議員の政策提案である。……

確かに、執行機関がいくら意見を聴く手続を踏んだといっても、個々の議員が多様な形で意見を聴いたのであれば、それにはかなわないでしょう。そのため、議会という制度がある以上、議員は政策条例の策定に取り組むべきなのでしょう。
ここで、議員提案の条例に関する私の自治体の状況を記載します。
松下先生は、条例を執行するためには、執行部との十分な調整が必要だが、全体にそれは不足気味であると述べられていますが(P78)、私の自治体では、その批判は当たらないと思います。
私は議会事務局の経験はないのですが、例規審査をしていた時期に、執行部の実施する事業に関して議員提案の政策条例が可決されたことが2件ありました。そして、そのいずれも議員と執行機関の職員からなる検討委員会を組織して、内容の検討を行っていました。そこでどのような議論が行われていたかは承知していないのですが、執行部と調整を行う一つの方法ではあるように思います。
ただ、議員提案の条例を積極的に進める上では、やはり議会事務局強化の問題は避けることはできないのですが、この行政改革の中、悩ましい問題でもあります。この点について松下先生は、執行機関の法制担当者の議会事務局への兼務発令が現実的な対応であるとされています(P72)。私も総論では賛成なのですが、実際問題として、議員提案の条例まで面倒を見ろと言われても、やっていられないというのが正直なところではないでしょうか。