条例で要綱を遵守することを定めることについて

かつて、条例で既存の要綱を住民に遵守させることを定めることがいいかどうか聞かれたことがあった。その動機がどのようなものであったのかは覚えていないが、既存の要綱をそのまま使えるものなら使ったほうが楽だからといった程度のことだったのかもしれない。
結論としては、適当ではないだろう。なぜなら、制定時はともかくとして、首長のみの判断で規制内容の変更等をすることができることになってしまうため、「義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」とする地方自治法第14条第2項に反することになってしまうのでないかと考えられるからである。
ところで、条例で要綱を引用している事例を少し調べてみたところ、さすがに「○○の者は、○○要綱を遵守しなければならない」という規定は見つからなかったが、次のような規定があった。

○○者は、……○○協会が定める○○要綱を遵守し……なければならない。

もちろん、この規定に対する罰則規定はなく、訓示規定に過ぎないのだが、条例で外部の団体が定める規定を遵守するよう求めるのは、奇異な感じがする。
さらに、次のような規定もあった。

第5条 市長は、良好な都市環境の形成と秩序ある都市機能の充実を図るため、○○市開発指導要綱を定めるものとする。
2 市長は、前項の○○市開発指導要綱に則り、開発者に対し適正に指導しなければならない。

条例で行政指導の根拠規定を置くことは、それ程珍しいことではないが、その場合には、具体的にどのような行政指導を行うこととするのかが重要であって、そのようなことではなく、単に要綱を定めるという形式的なことだけを規定するのは、いかがかと思ってしまう。
今回発見できた、要綱について触れている条例については上記のとおりだが、もっと調べてみると、他にも事例としてはありそうである。何となく恐ろしい感じがする。