リストラ条例

2011年5月27日付け記事「条例で懲戒処分の基準を定めることの可否」で関連する事項を取り上げたので、一応フォローしておきます。

MSN産経ニュース2011年8月9日付け配信記事
違反3回で懲戒…橋下維新、リストラ条例提案へ 府・市・堺市の職員 
大阪府橋下徹知事が率いる地域政党大阪維新の会」が、府と大阪、堺両市の3議会での提案を目指す一般職員と教職員の懲戒、分限免職の処分規定を定めた「職員基本条例案」の概要が9日、明らかになった。組織改編で余剰人員が発生した場合、分限免職の対象にする規定のほか、職務命令に3回以上違反した場合、懲戒免職処分できる規定も盛り込む方針。 
争議権がないなど労働基本権に制約がある公務員は、身分保障が前提となっており、職員組合などの反発は必至。この点について維新側は、第三者機関の監察委員会を設けて異議申し立てを可能にするなどし、公平性を保つとしている。 
維新幹部によると、対象は一般行政職員と教職員で、それぞれ別々に条例案を提出する方針。「整理解雇」とは明記しないものの、職制の見直しや事業の民営化を進めた上で余剰人員が生じた場合、分限免職の対象にする規定を盛り込むとしている。維新が訴える大阪市営地下鉄の民営化後の人員見直しなども視野に入れている。 
一方、職務命令違反については、原則として1回目は警告と研修、2回目は実名公表、3回目以降は懲戒免職処分とする方針。ただ、処分の軽重については、第三者委員会の判断を尊重するとしている。 
維新幹部は「地方公務員法でも、地方自治体が独自の人事制度を作るよう定めている。公務員は身分ではなく、一つの職業だと提起したい」としている。

今回は、2点について触れることとする。
1 「整理解雇」を行うことについて
「整理解雇」については、上記ブログ記事にもあるが、地方公務員法第28条第1項第4号は、「職制若しくは定数の改廃……により廃職又は過員を生じた場合」には免職することができるとしているので、条例で定めるまでもない事項である。
ところで、これも上記ブログ記事経由だが、総務省の調査によると、平成21年度中に上記事由により免職となった職員は、893人いるとのことである。意外に多いというのが第一印象だが、このなかに、一般の行政職はほとんどいないのではないだろうか。つまり、上記配信記事に地下鉄民営化後の人員見直し云々とあるが、アウトソーシング等により、特定の職種を廃止することで人員整理をすることは通常あり得ることであり(そのような場合でも、身分は違えども同じ職場で働くことができるような措置もとられるのだが)、そのような人がほとんどなのではないだろうか。
では、一般の行政職の場合はどうかというと、定数の改廃等を行ったとしても、退職者の不補充という方法で職員を減らすのが一般的だろう。それは、実際問題として上記事由だけで特定の者を免職するのは困難であるからである。
そうすると、「整理解雇」について条例で規定しても、あまり意味はないことになり、結局単なるパフォーマンスだけということになる。
2 監査委員会を設けることについて
上記配信記事では、「第三者機関の監察委員会を設けて異議申し立てを可能にする」としている。
この記事だけではよく分からない点もあるのだが、どうも執行機関的なものを考えているように思える。
そうすると、人事委員会との関係をどのように考えているのかよく分からない。
さらに、この種の審査機関は、かつて情報公開条例に基づく審査会において議論されたように、せいぜい地方自治法上の附属機関である諮問機関にしかすることができない。
したがって、想定しているような機能を果たす組織には到底なり得ないと考えられる。
最終的には、提出された条例案そのものを見てみないと何ともいえないが、維新の会のこの件に関する議論は、どうも現実離れしているように感じられる。