基本構想の策定等を議会の議決事項とすることについて(下)

今回は、基本構想の策定等を議会の議決事項とする条例案について、首長提案とすべきか、議員提案とすべきかといった条例案の提出権の問題、それから、条例に基本構想の策定を義務付ける規定を設けるべきかどうかといった条例の内容の問題という2点について記載する。
1 条例案の提出権について
本件の条例案の提出権が、首長にあるか、議会にあるかについては、結論からいうと、両者にあることになる。この点については、以前(2007年5月20日付け記事「自治体の組織(9)〜附属機関(その2)」)記載したことがあるが、一般的には、条例案の提出権は、「普通地方公共団体の長は、条例の定めるところにより、……する」と書かれていれば首長に、「普通地方公共団体の議会は、条例の定めるところにより、……する」と書かれていれば議会に専属しており、それ以外の場合には、その両者が有していると解されている(松本英昭『新版逐条地方自治法(第4次改訂版)』(P390〜))。
地方自治法第96条第2項は、「普通地方公共団体は、条例で……」という規定になっているため、形式的には両者が有していると解することになる。
ただ、実際にはこの種の条例は、首長の行為を監視するという観点から議員提出のケースが多いのではないかと思う。しかし、首長の側から、より民主的な手続を踏むために議会の議決を経ようとすることも十分に考えられるので、実質的に考えても条例の提出権は、両者にあると考えてよいのではないだろうか。
2 条例の内容について
本件の条例には、議会の議決を経る規定のほか、基本構想の策定を義務付ける規定を設けることも、もちろん構わない。
しかし、この点は、策定されている基本構想に期間(目標年度)を定めていなければ、そもそも問題にならない。実際、政令指定都市のうち、ホームページで基本構想の内容を確認することができる13市中*1、8市については、期間を定めていない。
また、首長と議会の関係等によっても、対応は異なってくるであろう。
したがって、自治体の実情によって異なってくるのだろうが、仮に私が首長部局の担当として案を作るのであれば、条例案を提出する直接的な理由が、あくまでも地方自治法の改正に伴うもの、つまり、これまで議会の議決を経て策定してきた基本構想に関する規定が削除されたため、従来通り基本構想の策定について議会の議決とすることであるので、議会の議決事項とすることのみを規定すれば十分であると考え、基本構想の策定まで義務付けるものにはしないと思う。
しかし、この点は、いろいろな考え方があるところである。各自治体における対応を注目していきたい。

*1:前回のコメント欄でチホウの人さんに御教示いただいた。