職員基本条例案(中)

今回は、条例案に規定されている人事監察委員会について取り上げる。
条例案の人事監察委員会に関する規定は、次のとおりである。

(人事監察委員会)
第46条 地方自治法(昭和22年法律第67号)第158条第1項の規定に基づき、知事の権限に属する事務を分掌させるため、人事監察委員会を設置する。
2 人事監察委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。 
(1) 第8章の規定に基づき懲戒処分及び分限処分に係る審査を行うこと 
(2) 第10章の規定に基づき、再就職に関する事項について調査及び勧告を行うこと 
(3) 前2号に掲げるもののほか、他の条例の規定によりその権限に属するものとされた事項を処理すること
(人事監察委員会の組織)
第47条 人事監察委員会は、委員長及び委員4人をもって組織する。
2 委員長は常勤とし、委員4人は非常勤とする。
3 委員長は、会務を総理し、人事監察委員会を代表する。
4 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
5 人事監察委員会に事務局を設置し、その組織及び必要な事項は規則で定める。
(委員長及び委員の任命)
第48条 委員長及び委員2名は、人格が高潔であり、職員の人事に関する事項に関し公正な判断をすることができ、法令又は社会に関する学識経験を有する者から、知事が任命する。
2 委員2名は公募により、職員の人事に関する事項に関し公正な判断ができる者のうちから委員長が推薦し、知事が任命する。
3 次の各号のいずれかに該当する者は、委員となることができない。
(各号略)
(委員長及び委員の任期)
第49条 前条第1項で任命された委員長及び委員の任期は四年とし、前条第2項で任命された委員の任期は2年とする。ただし、補欠の委員長及び委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 前条第1項の規定により任命された委員長及び委員は、再任されることができる。
3 委員長及び委員の任期が満了したときは、当該委員長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
(免職)
第50条 第48条第1項の規定により任命された委員長及び委員は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して免職されることがない。
(各号略)
2 知事は、委員長又は委員が前条各号のいずれかに該当するときは、その委員長又は委員を免職しなければならない。
3 委員長は、第48条第2項の規定により任命された委員が不適格であると判断した場合は、その委員を免職することを知事に求めることができる。ただし、思想信条、性別、社会的地位を理由としてはならない。

人事監察委員会に関する報道がなされたとき、私は、執行機関的なものを考えているように思えるが、自治体の条例では執行機関を設けることができないので、附属機関にせざるを得ないだろうと記載したことがある(2011年8月12日付け記事「リストラ条例」)。
しかし、予想に反して、知事の内部組織としたのである(第46条第1項)。人事監察委員会は、常勤の委員長と非常勤の委員から成り(第47条第1項及び第2項)、任期制となっている(第49条)。
委員会的なものを知事の内部組織とすることについては、例えば例規審査委員会のようなものがあることを考えると、必ずしも否定することはできない。しかし、条例案の人事監察委員会の規定は行政委員会の規定を参考にしているのであろうが、組織の位置付けのみ知事の内部組織としたため、全体として非常におかしな規定となっている。いずれにしろ、このような委員会を知事の内部組織として設けるのであれば、組織的には、その委員をどのような者とすべきかを含め、十分検討する必要があるだろう。
人事監察委員会の権限については、懲戒処分及び分限処分の審査という権限を有することとしているが(第46条第2項第1号)、これは、いかなる任命権者も、処分を行うに当たって、知事の内部組織の審査に付した上で行わなければならないことであり、知事に人事に関する権限を集めようとするものであり、地方公務員法における人事機関の考え方を無視したものと言わざるを得ないだろう。
しかし、条例案は、任命権者が懲戒処分又は分限処分を行うに当たっては、人事監察委員会の審査の結果を尊重して行うこととしているため、この委員会を附属機関としても違和感はなく、組織的にも問題はなくなる。ただし、常勤の委員長や事務局を置くことにこだわるのであれば、附属機関とすることはできないだろうが(地方自治法第202条の3第2項及び第3項参照)。