「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」と地方公務員の給与(中)

今回は、法に対する政府(総務大臣)の見解を取り上げる。
国会において、次のような議論がなされている。

第180回国会衆議院総務委員会(平成24年2月23日)
柿澤委員 ……地方公務員給与の取り扱いについても、先ほど来何度も取り上げられております。そもそも復興財源として政府が特例法案を出してきたのが去年の秋でありますが、私はそのときに、本委員会の一般質疑で既にこのことを質問させていただいております。そのときの川端大臣の答弁は、やはりあくまで地方が決めることだ、こういうことであったわけです。
先日就任された岡田副総理も、一度はテレビで、地方も人ごとではない、こういうふうにおっしゃったんですが、結局、参議院予算委員会で我が党の小野次郎議員から、本当にやるのか、こういうことを聞かれて、それぞれの地方自治体で判断することだと発言を後退させたわけです。要するに、腰砕けであるというふうに言わざるを得ないと思います。
これを聞いても、もう一度地方自治体が決めることだという答弁が繰り返されるだろうから、もうこれは聞きません。
しかし、岡田副総理はこうも言っているんです。地方にも努力をしてもらいたいが、一義的には地方が考えることだと。地方にも努力をしてもらいたい。つまりは、財政状況を踏まえれば、地方公務員も足並みをそろえた給与削減を行うべきだと政府としては考えている、こういうふうに考えているということでいいかどうか。あるいは、これは政治家岡田克也さんの個人的な意見なのか。川端総務大臣はいかが考えているか、この点について、まずお伺いしたいと思います。
川端国務大臣 前にもお答えをしたのかもしれませんが、もう聞かないとおっしゃいましたけれども、まさに地方公務員法において、地方のことは地方で決めると。そのときの判断として、その地域の事情、民間の事情、それから人事委員会の勧告がある場合はその部分に加えて国の状況というのも踏まえて自律的に判断をし、条例で決めるということが基本でありますので、その分では、まさにそういうことでお決めいただきたい中に、国がどうするかということも御判断いただく基準の一つであることは間違いがありません。そこで御自分で決めていただきたいということでありますので、そういうことを踏まえて、地方は地方でしっかりと判断して決めていただきたい。
岡田副総理がおっしゃったのも、国がいろいろやるときに、そういう状況にあるという中で、地方もしっかり考えてくださいとおっしゃったんだというふうに私は理解をしております。
柿澤委員 これは一方的な片思いみたいな話ではなくて、本当に国、地方あわせて人件費の削減を、やはり今の財政状況を考えれば進めていかなければならない。こういう認識を共有して進めていくべきものだというふうに思うんです。
そういう意味でいうと、昨年法定化された国と地方の協議の場で、地方公務員人件費の削減について地方団体に要請する、こういうことをすべきではないかと私は思います。これについても昨年秋お聞きをいたしたんですけれども、みんなの党さんも地域主権ですよね、地域が自主的にお決めになることなんですから要請はいたしませんよ、こういう趣旨の答弁を川端大臣からいただいています。
しかし、これでは21兆円の地方公務員人件費を国としてはいわば聖域化して、国家公務員の削減幅に合わせた、例えば地方交付税の減額もしないんでしょう。これが民主党政権地域主権というものの行き着く帰結なんですか。
国と地方の協議の場というのは、地方団体が協議を求めることを、国が一方的に地方の言うことを聞く、こういう場ではないはずだと思うんです。国がやるのであれば地方もやってほしい、こういう意思表示をこういう場を活用して国として行っていく。そうでなければ、先ほどラスパイレス指数の話もありましたけれども、このようなアンバランスな状況が放置をされてしまう。このことについて、ぜひ国と地方の協議の場で国として取り上げていただきたいと思いますが、御見解をお伺いします。
川端国務大臣 国と地方の協議の場で取り上げるつもりはないと前に御答弁した立場は今も変わっておりません。  そして、地方は地方なりに大変な努力をしておられます。そういう意味では、例えば、給与の削減の実施団体で削減最高率10%以上の都道府県ということでいったら、岐阜県が14から6、大阪府が14から3.5、鹿児島が10から5云々、やはり10%近い部分を努力しておられるところもあります。まさにそれは、それぞれの地域の財政事情に応じて、できる部分は相当な御苦労をいただいているところもあります。したがいまして、そういう中で、国もやるということの事情の中で、以上に既にやっていただいているところもあるというふうに思います。
したがって、一律的に、例えばいろいろな財政措置も含めてやるとかいうことをするつもりもありませんと同時に、国と地方の協議の場でこれを具体的に数字としてどうしようかということの、場にはなじまないというふうに私は思っております。
第180回国会参議院総務委員会(平成24年2月28日)
江崎孝 ……次に、総務大臣の政府としての認識を伺います。
国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律案第1条の趣旨と、修正案附則第12条、地方公務員の給与を踏まえ、国家公務員の給与引下げに伴う地方公務員給与及び自治体財政への政府の対応について見解を明らかにしていただきたいと思います。
国務大臣川端達夫君) 地方公務員の給与については、各地方公共団体において、それぞれの時点での状況を踏まえ議会で十分に議論の上、条例で定められるものであります。
本給与臨時特例法案が成立した場合には、各地方公共団体において、同法附則第12条の規定を踏まえ、引き続き国民、住民の理解と納得が得られるよう情報公開を徹底するなど、自主的な取組を進めながら適切に決定することが肝要でございます。
したがって、地方公務員の給与について、総務省から各地方公共団体に対して、今回の国家公務員に係る時限的な給与削減措置と同様の措置を実施するよう要請することや強制することは考えておりません。
総務省といたしましては、地方財政計画の策定に当たり、本臨時特例法案に定める給与削減措置と同様の措置が一律に実施されることを前提とした給与関係経費を計上することは考えておらず、今後の各地方公共団体の給与改定の動向等を踏まえつつ、所要の給与関係経費を計上し、必要な地方交付税総額を確保していくこととしております。
江崎孝 大臣、義務教育費国庫負担金の取扱いを含めて、昨年6月3日の閣議決定質問主意書答弁と変更ないという理解でよろしいですか。
国務大臣川端達夫君) これまでの考え方に変更はございません。

総務省は、平成24年2月29日付け総行給第17号総務副大臣通知において、法附則第12条が規定されたことに関し、「地方公務員の給与については、地方公務員法及びこの法律の趣旨を踏まえ、地方公共団体において自主的かつ適切に対応されるよう期待いたします」としているが、これは、上記の総務省の考え方を表したものであろう。ただし、その規定振りから「期待する」という解釈は出てこないと思う。
なお、みんなの党の柿澤議員は、討論においても、政府の見解を地方公務員の人件費を聖域化するもので、「これが民主党政権地域主権ということなのか」と批判している。しかし、ここで地域主権地方分権)を持ち出すのは筋違いではないだろうか。彼の考える地域主権地方分権)とは何か聞いてみたいものである。もしかすると地方分権否定論者なのかもしれない。