人事院規則9−129附則第5項及び第6項の意味〜適用と準用の規定

平成24年5月1日に公布された人事院規則9−129−1により、人事院規則9−129が改正されているが、改正後の同規則附則第5項及び第6項は、少し見ただけでは、その意味がよく分からない規定である。そこで、これらの規定について触れてみることにする。
まず、改正後の同規則の関係規定を次に掲げる。

人事院規則9−129(東日本大震災に対処するための人事院規則9―30(特殊勤務手当)の特例)
(災害応急作業等手当の特例)
第2条 職員が次に掲げる作業に従事したときは、災害応急作業等手当を支給する。
(1) 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の敷地内において行う作業
(2) 原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)第20条第3項の規定に基づく原子力災害対策本部長の地方公共団体の長に対する指示(以下「本部長指示」という。)により、帰還困難区域に設定することとされた区域において行う作業(前号に掲げるものを除く。)
(3) 本部長指示により、居住制限区域に設定することとされた区域において行う作業(前2号に掲げるものを除く。)
2 前項の手当の額は、作業に従事した日1日につき、次の各号に掲げる作業の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
(1) 前項第1号の作業のうち原子炉建屋(人事院が定めるものに限る。)内において行うもの 4万円
(2) 前項第1号の作業のうち前号及び第4号に掲げるもの以外のものであって、故障した設備等を現場において確認するもの(人事院が定めるものに限る。) 2万円
(3) 前項第1号の作業のうち前2号及び次号に掲げるもの以外のもの 1万3,300円
(4) 前項第1号の作業のうち人事院が定める施設内において行うもの 3,300円
(5) 前項第2号の作業のうち屋外において行うもの 6,600円
(6) 前項第2号の作業のうち屋内において行うもの 1,330円
(7) 前項第3号の作業のうち屋外において行うもの 3,300円
(8) 前項第3号の作業のうち屋内において行うもの 660円
3 同一の日において、前項各号の作業のうち二以上の作業に従事した場合においては、当該二以上の作業に係る手当の額が同額のときにあっては当該手当のいずれか一の手当、当該二以上の作業に係る手当の額が異なるときにあっては当該手当の額が最も高いもの(その額が同額の場合にあっては、その手当のいずれか一の手当)以外の手当は支給しない。
4 第2項第5号又は第7号の作業に従事した時間が1日について4時間に満たない場合におけるその日の当該作業に係る災害応急作業等手当の額は、前2項の規定により受けるべき額に100分の60を乗じて得た額とする。
   附 則
(第2条の特例)
2 職員が次に掲げる作業に従事したときは、当分の間、災害応急作業等手当を支給する。
(1) 本部長指示により、原子力災害対策特別措置法第28条第2項の規定により読み替えて適用される災害対策基本法昭和36年法律第223号)第63条第1項の規定に基づく警戒区域に設定することとされた区域において行う作業(第2条第1項各号に掲げるもの及び本部長指示により、避難指示解除準備区域に設定することとされた区域において行うものを除く。)
(2) 本部長指示により、居住者等が避難のための立退き又は避難のための計画的な立退きを行うこととされた区域において行う作業(第2条第1項各号及び前号に掲げるもの並びに本部長指示により、避難指示解除準備区域に設定することとされた区域において行うものを除く。)
3 前項の手当の額は、作業に従事した日1日につき、次の各号に掲げる作業の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
(1) 前項第1号の作業のうち屋外において行うもの 6,600円
(2) 前項第1号の作業のうち屋内において行うもの 1,330円
(3) 前項第2号の作業のうち屋外において行うもの 5,000円
(4) 前項第2号の作業のうち屋内において行うもの 1,000円
4 同一の日において、前項各号の作業のうち二以上の作業に従事した場合又は第2条第2項各号の作業のうち一以上の作業に従事し、かつ、前項各号の作業のうち一以上の作業に従事した場合においては、これらの作業に係る手当の額が同額のときにあっては当該手当のいずれか一の手当、これらの作業に係る手当の額が異なるときにあっては当該手当の額が最も高いもの(その額が同額の場合にあっては、その手当のいずれか一の手当)以外の手当は支給しない。
5 前項の規定の適用がある場合であって、第2条第1項の規定により災害応急作業等手当を支給する場合の第2条第4項の規定の適用については、同項中「前2項」とあるのは、「第2条第2項及び附則第4項」とする。
6 第2条第4項の規定は、附則第2項の規定により災害応急作業等手当を支給する場合について準用する。この場合において、第2条第4項中「第2項第5号又は第7号」とあるのは「附則第3項第1号又は第3号」と、「前2項」とあるのは「附則第3項及び第4項」とする。

附則第2項は、第2条で定める作業のほか、災害応急作業等手当について支給対象となる作業を定め、附則第3項でその額を定めている。ただし、その作業が附則第3項各号に掲げる二以上の作業に該当する場合や第2条第2項各号に掲げる作業にも該当するものがあるため、附則第4項で、第2条第2項各号又は附則第3項各号に定めるどの額の手当を支給するのか、その振り分けを行っている。
そして、第2条第2項各号に定めるいずれかの額の手当、すなわち同条第1項に基づき支給することとなる手当に係る作業のうち、同条第2項第5号又は第7号に掲げるものについては、そのまま同条第4項の適用があることになる。しかし、同項の「前2項」は読み替える必要があるので、附則第5項で適用の読替えを書いているわけである。
これに対し、附則第3項各号に定めるいずれかの額の手当、すなわち附則第2項に基づき支給することとなる手当に係る作業のうち、附則第3項第1号又は第3号に掲げるものについては、第2条第4項の規定はそのまま適用されることはない。したがって、同様に1日の従事時間が4時間未満のものについては、手当の額を割り落としたいのであれば、同項に相当する規定を書くか、同項の準用規定を置くことになる。この規則は後者を選択し、附則第6項で準用読替えの規定を置いているわけである。
このように、やりたいことが分かっていれば、附則第5項及び第6項の意味が分かるのだが、そうでなければ、一度見ただけでは何を言いたいのかよく分からないのではないだろうか。
分かりにくいのは、附則第4項で振り分けられた手当が、第2条第4項の適用があるものとないものに分かれてしまうことにあるように思われる。そうすると、附則第4項で振り分けられた手当は、第2条第4項の適用はないこととして、まとめて同項に相当する規定を書き下ろせばよいことになる。
そうすると、附則第5項及び第6項に相当する規定は、次のように書けばよいことになる。

5 前項の規定の適用がある場合であって、第2条第2項第5号若しくは第7号又は附則第3項第1号又は第3号の作業に従事した時間が1日について4時間に満たない場合におけるその日の当該作業に係る災害応急作業等手当の額は、同条第2項又は前2項の規定により受けるべき額に100分の60を乗じて得た額とする。この場合において、同条第4項の規定は、適用しない。

<追記2012.6.16>
上記の人事院規則9−129附則第5項及び第6項の代替案は、同規則附則第3項第1号又は第3号の作業に従事した場合で、同規則附則第4項の適用がないときの事例を考慮すると、適切ではなかったようである*1
それを踏まえ、修正した案を次に記載する。

5 前項の規定の適用がある場合における第2条第2項第5号若しくは第7号の作業に従事した時間又は附則第3項第1号若しくは第3号の作業に従事した時間が1日について4時間に満たない場合におけるその日の当該作業に係る災害応急作業等手当の額は、同条第2項又は前2項の規定により受けるべき額に100分の60を乗じて得た額とする。この場合において、同条第4項の規定は、適用しない。

*1:「又は」「若しくは」の使い方にも適切でない箇所があった。