義務付け・枠付けの存置を許容する場合のメルクマール

今次の地方分権に係る一括法において行われた法令による義務付け・枠付けの緩和については、平成20年5月28日に出された地方分権改革推進委員会の第1次勧告において、次の7項目をその存置を許容する場合のメルクマールとしてその後の作業を進める旨が記載されている。

1 地方自治体が私有財産制度、法人制度等の私法秩序の根幹となる制度に関わる事務を処理する場合
2 補助対象資産又は国有財産の処分に関する事務を処理する場合
3 地方自治に関する基本的な準則(民主政治の基本に関わる事項その他の地方自治体の統治構造の根幹)に関する事務を処理する場合、及び他の地方自治体との比較を可能とすることが必要と認められる事務であって全国的に統一して定めることが必要とされる場合
4 地方自治体相互間又は地方自治体と国その他の機関との協力に係る事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合
5 国民の生命、身体等への重大かつ明白な危険に対して国民を保護するための事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合
6 広域的な被害のまん延を防止するための事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合
7 国際的要請に係る事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合

その後、「義務付け・枠付けの存置を許容する場合のメルクマール」非該当だが、残さざるを得ないと判断するもののメルクマールとして7項目が示され、メルクマールは14項目となった。
このメルクマールの該当・非該当の判断に当たって、各府省から条例ではなく、長その他の執行機関が定める規則による決定の余地を許容しているものについては存置してもよいのではないかといった意見が出されたようであるが、地方分権改革推進委員会は、次のような見解を示し、その存置を否定している。

義務付け・枠付けの中には、条例ではないが、長その他の執行機関が定める規則による自主的な決定を許容しているもの、又は法令による義務付けについて長その他の執行機関が定める規則等による補正を許容しているものがある。これについては、本来、地方自治を重視する立場からは、地方議会の議決を経て、条例で行うべきである。したがって、その存置を許容するためのメルクマールを設定する特段の必要性は認められない。

行政委員会の規則については別に議論する必要はあるだろうが、二元代表制をとる地方自治体において、地方自治を重視する立場から一律に条例で行うべきという理屈が私にはよく分からない。少なくとも、従来政令で定めていた事項であればともかく、省令で定めていた基準については、所詮その程度の内容なのであるから、項目によっては、首長規則に委任するものがあってもよいのではないだろうか。
結果として、そもそも条例事項とすべきでない事項が条例事項とされているように感じるのである。