法律における届出等の義務違反に対する制裁等について(下)

最終回は、勧告等の行政指導を絡めた仕組みとなっている事例を取り上げる。
5 勧告→公表
規定例としては、次の「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」の例がある。

特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律
(指定化学物質等の性状及び取扱いに関する情報の提供)
第14条 指定化学物質等取扱事業者は、指定化学物質等を他の事業者に対し譲渡し、又は提供するときは、その譲渡し、又は提供する時までに、その譲渡し、又は提供する相手方に対し、当該指定化学物質等の性状及び取扱いに関する情報を文書又は磁気ディスクの交付その他経済産業省令で定める方法により提供しなければならない。
2・3 (略)
(勧告及び公表)
第15条 経済産業大臣は、前条第一項の規定に違反する指定化学物質等取扱事業者があるときは、当該指定化学物質等取扱事業者に対し、同項の規定に従って必要な情報を提供すべきことを勧告することができる。
2 経済産業大臣は、前項の規定による勧告を受けた指定化学物質等取扱事業者がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。

この例もそうだが、公表を仕組む場合には、一般的な情報提供という意味合いを持つ場合が通常である。
6 助言・勧告→命令(→罰則)
規定例としては、次の「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」の例がある。

建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律
(対象建設工事の届出等)
第10条 対象建設工事の発注者又は自主施工者は、工事に着手する日の7日前までに、主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
(1) 解体工事である場合においては、解体する建築物等の構造
(2) 新築工事等である場合においては、使用する特定建設資材の種類
(3) 工事着手の時期及び工程の概要
(4) 分別解体等の計画
(5) 解体工事である場合においては、解体する建築物等に用いられた建設資材の量の見込み
(6) その他主務省令で定める事項
2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち主務省令で定める事項を変更しようとするときは、その届出に係る工事に着手する日の7日前までに、主務省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
3 都道府県知事は、第1項又は前項の規定による届出があった場合において、その届出に係る分別解体等の計画が前条第2項の主務省令で定める基準に適合しないと認めるときは、その届出を受理した日から7日以内に限り、その届出をした者に対し、その届出に係る分別解体等の計画の変更その他必要な措置を命ずることができる。
(助言又は勧告)
第14条 都道府県知事は、対象建設工事受注者又は自主施工者の分別解体等の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、基本方針(第4条第2項の規定により同条第1項の指針を公表した場合には、当該指針)を勘案して、当該対象建設工事受注者又は自主施工者に対し、分別解体等の実施に関し必要な助言又は勧告をすることができる。
(命令)
第15条 都道府県知事は、対象建設工事受注者又は自主施工者が正当な理由がなくて分別解体等の適正な実施に必要な行為をしない場合において、分別解体等の適正な実施を確保するため特に必要があると認めるときは、基本方針(第4条第2項の規定により同条第1項の指針を公表した場合には、当該指針)を勘案して、当該対象建設工事受注者又は自主施工者に対し、分別解体等の方法の変更その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
第49条 第15条又は第20条の規定による命令に違反した者は、50万円以下の罰金に処する。

この例は、罰則まで規定しているが、命令までとしている例もある。
命令を規定するのであれば、この例のように、通常は、助言・勧告の対象は、届出違反者に限らないこととするのであろう。