制裁として用いる公表に関するメモ〜JAS法の例

平成21年法律第31号により「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」が改正され、次のとおり公表に関する規定が設けられている。

第19条の14の2 前条の規定により指示又は命令が行われるときは、これと併せてその旨の公表が行われるものとする。

この規定に関し、次の解説がある。

旧JAS法の下でも、品質表示基準の違反について指示や命令がなされた場合には、原則その旨の公表が行われてきたところではあるが、その根拠となる規定が法律上存在したわけではなく、農林水産省の定める指針等に基づき行われていたにすぎなかった。
改正法では、公表が、一般消費者に対する情報提供にとどまらず、結果として制裁的な効果も有するものであることを踏まえ、また、指示や命令がなされた場合にはすべて公表しなければならないこととするため、法律上、公表の根拠となる規定を設けることとしたものである……。(衆議院法制局第四部第一課 津田樹見宗「食品の偽装表示についての対策強化〜農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律」『時の法令(NO.1842)』(P10))

この公表制度は、2007年12月8日付け「制裁として用いる公表に関するメモ(1)」で便宜的に整理したときの分類でいうと、「9 法的根拠なく行っていた公表を法律に取り込むこととしたもの」に当たることとなる。
しかし、JAS法にはもともと公表規定があったのであるが、削除された経過がある。上記の解説に次のように記載されている。

平成14年の改正の際に、公表の規定がJAS法から削除された。削除の理由の一つとして、いわゆる情報公開法の制定を契機に、行政情報は、特段の法律上の根拠規定がなくても原則公表すべきであるとの考え方の下、法律上の根拠規定を削除する方向で整理されたことが挙げられる(参照『新訂早わかり食品衛生法第二版』社団法人食品衛生協会、333〜335ページ)。(『時の法令(NO.1842)』(P10))

公表制度を考える際に、情報公開制度との関係の検討は必須であると言えるだろう。
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