地方税法は組織法か

次の論述は、早稲田大学の大浜啓吉教授が神奈川県臨時特例企業税通知処分取消等請求事件訴訟で県側の意見書として提出されたものの一部である。

……地方税法は法律ではあるが、もともと地方公共団体の事務処理に必要な財源を得るのが本来の目的であるから、地方公共団体の基礎にある「地域社会」から徴収するのが筋であって、全国民を対象に負担を強いるべきものではなく、全ての紛争事件に適用されることを予定したものでもない。その意味で、国税に関する個別実体租税法とは性質が異なり、地方税に関する大綱(大枠)ないし標準を定めたものにすぎない。
このように、地方税法の基本的性格は、自治体と住民間の権利義務関係を規律する規範ではなく、国と地方公共団体という二つの行政主体の所掌事務と権限および両者の関係を規律するものなのである。つまり、地方税法の基本的性格は、行政作用法ではなく、広義の行政組織法に属するというべきであろう。行政機関の「任務および所掌事務の範囲」について定めているといえるからである。行政作用法でないことは確かであり、国と地方公共団体との税源配分を示すという意味では組織法である。……(大浜啓吉「条例制定権と法の支配」『自治研究(第88巻・第2号)』(P35)

地方税法をこのように考えたことはなかったので、興味深い主張である。解釈としては成り立つとは思う。
しかし、地方税法に規定されている自治体と住民間の規定の全てを自治体の税条例において規定しているわけではなく、法の規定によっている部分もある。したがって、少なくとも実務ではこのような解釈にはよっていないと言えるのではないだろうか。