いわゆる指定機関の指定の手続

「指定機関」という法令用語はないのだが、吉国一郎他『法令用語辞典(第9次改定版)』では、「指定…機関」という用語を取り上げ、次のように説明されている。

行政事務のうち、試験実施事務、証明事務、検定事務のような単純かつ定型的な事務については、行政庁が一定の者を指定して、その者にこれらの事務を行わせることがあり、その指定を受けた者を、法令上の略称として、その行う事務の種類に応じ、指定試験機関……、指定検査機関……、指定検定機関……などという。

自治体に馴染みのある公の施設における指定管理者も、「指定……機関」という名称ではないが、その一種である。ここでは、この「指定…機関」を単に「指定機関」と呼ぶことにする。
指定機関は、指定管理者や建築基準法に基づく指定確認検査機関のように、純粋に民間の団体の参入を想定しているものもあるが、外郭団体を設立してその団体を指定することを想定しているものもある。
例えば、住民基本台帳法に基づく指定情報処理機関は都道府県知事が指定することになっているが、実際には国の外郭団体である財団法人地方自治情報センター(LASDEC)が全ての指定を受けることを想定しており、事実そのとおりになっている。
ところで、この指定情報処理機関は特定の団体しか想定していないにもかかわらず、その指定に当たっては、次のようにまず指定を受けようとする者が申請を行うこととしている。

住民基本台帳
(指定情報処理機関の指定等)
第30条の10 都道府県知事は、総務大臣の指定する者(以下「指定情報処理機関」という。)に、次に掲げる事務(以下「本人確認情報処理事務」という。)を行わせることができる。
(1)〜(7) (略)
2  前項の規定による指定は、本人確認情報処理事務を行おうとする者の申請により行う。
3〜5 (略)

このような規定の仕方は、他の指定機関でも一般的なものとなっており、国の事務を指定機関に行わせる場合には、「全国に一を限って」と規定しつつ、あくまでも、まず団体に申請をさせることとしている。
これは、たとえ国が設立した外郭団体であっても、国とは別の団体である以上、その団体から申請させるのが筋であるからといったところだろうか。
しかし、次のような例外もある。

電気通信回線による登記情報の提供に関する法律
(指定等)
第3条  法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、全国に一を限って、次条第1項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。
(1)〜(5) (略)
2〜4 (略)

このように規定している例は、他にはちょっと見当たらない。こちらの方が実態に即した規定の仕方ではあるのだが……。