自治体組織の多様化の可能性
自治体の組織については、憲法第93条第1項が「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。」と規定し、同条第2項が「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」と規定しており、一般的には次のように二元代表制をとっているものと解釈されている。
この規定は、議決機関である議会とは独立に執行機関の長が直接に住民の選挙で選ばれ、それぞれが住民に対して直接に責任を負う首長制を採用したものと一般的に解されて(いる。)(宇賀克也『地方自治法概説(第2版)』(P90))
しかし、必ずしもそのように解釈する必要はないとする見解もあり、例えば磯崎初仁ほか『ホーンブック地方自治』(P88)には、次のような解釈をすることで自治体の組織が多様化する余地があることを提示している。
- 憲法第93条第2項の「地方公共団体の長」は、独任制の首長だけではなく、合議体であってもよいとの解釈をとる。→ 公選首長を置かず、議会が議事機関と執行機関を兼ねる一元代表制を導入する余地が生じる。
- 憲法上の「地方公共団体の長」と地方自治法上の「執行機関」を概念的に分離する。→ 直接公選首長の権限を大幅に削減した上で名誉職的な地位にとどめる一方、議事機関である議会を同時に「執行機関」と位置づけることで、カウンシル制の導入が可能になる。
このことは、地方自治法が上記の一般的な解釈を前提としている以上(同法第89条・第139条参照)、自治体でどうこうできる問題ではないのだが、このようなことを考えてみることも大切なのではないかと感じる。