立入検査の規定における解釈規定

条例で立入検査の規定を置く場合に、あわせて法律の例にならって「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」という解釈規定を置く例がみられる。
こうした規定を置く理由は、行政上の立入検査は、裁判官の令状なしにその権限を付与するものであり、行政上の取締り等についてのみその権限が与えられるということを明確にするためであるとされている(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P113)参照)。
しかし、須藤陽子『行政強制と行政調査』(P177〜)によると、この規定は、GHQの要請により置かれるようになったとのことである。つまり、戦前は、警察組織が所管する事項が非常に多く、強大な権力が警察組織に集中していたことによって人権侵害が引き起こされたため、GHQの関与により警察権の分散がなされたが、権限行使の目的面においても、この規定により権限の乱用を戒めることを意図していたとのことである。
上記の解釈規定について、私は、警察組織が行政上の権限を行使する場合であれば置く意味があるだろうが、そうでなければ、あえて置く必要はないのではないかと思っていたが、この解釈規定が置かれた経過が上記のようなものであれば、今日においては、置く意味自体なくなっていると言ってもよいのではないだろうか。