書き振りが気になる規定の例(2)

古い法律であるためか、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」は、読みにくく、適切とは思えない規定が幾つかある。例えば、次の規定である。気になるのは、太字の部分である。

(県費負担教職員の任用等)
第40条 第37条の場合において都道府県委員会(この条に掲げる一の市町村に係る県費負担教職員の免職に関する事務を行う者及びこの条に掲げる他の市町村に係る県費負担教職員の採用に関する事務を行う者の一方又は双方が第55条第1項、第58条第1項又は第61条第1項の規定により当該事務を行うこととされた市町村委員会である場合にあつては、当該一の市町村に係る県費負担教職員の免職に関する事務を行う教育委員会及び当該他の市町村に係る県費負担教職員の採用に関する事務を行う教育委員会)は、地方公務員法第27条第2項及び第28条第1項の規定にかかわらず、一の市町村の県費負担教職員(非常勤の講師(同法第28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める者を除く。以下同じ。)を除く。以下この条、第42条、第43条第3項、第44条、第45条第1項、第46条、第47条、第58条第2項、第59条及び第61条第2項において同じ。)を免職し、引き続いて当該都道府県内の他の市町村の県費負担教職員に採用することができるものとする。この場合において、当該県費負担教職員が当該免職された市町村において同法第22条第1項(教育公務員特例法第12条第1項の規定において読み替えて適用する場合を含む。)の規定により正式任用になつていた者であるときは、当該県費負担教職員の当該他の市町村における採用については、地方公務員法第22条第1項の規定は、適用しない。

(1) 1番目の太字の部分
第37条は、県費負担教職員の任命権が都道府県教育委員会にあるとする規定である。あえて書く必要はないだろう。
(2) 2番目の太字の部分
この部分は、県費負担教職員の任免権者は都道府県教育委員会であるが、市町村教育委員会が任命権者となる場合があるため、その場合の置換え的な部分であるが、気になるのは次の2点である。

  • 「この条に掲げる○○」の「○○」は、それ以降に出てくる「県費負担教職員の免職」と「他の市町村に係る県費負担教職員の採用」を指しているものと思われるが、条における用語の一部を捉えて「この条に掲げる」とする例は、ほとんど見かけない。この条における「県費負担教職員」は、その意味を限定して用いているため、「この条に掲げる○○」としているのであろうから、二重括弧になってしまうが、最初の「県費負担教職員」で意味を限定すればよい。
  • 「……場合にあつては、……県費負担教職員の免職に関する事務を行う教育委員会及び……他の市町村に係る県費負担教職員の採用に関する事務を行う教育委員会」の部分について、「市町村委員会」とせずに「教育委員会」としているのは、市町村委員会と都道府県委員会とで一連の事務を行う場合があるからであろう。しかし、この一連の事務を同一の市町村委員会が行う場合には、2か所の「教育委員会」が同一のものを指すことになり、適切ではないので、表現を工夫する必要がある。

(3) 3番目の太字の部分
(2)にも当てはまるのだが、個々の県費負担教職員は、一の市町村にのみ所属しているのが通常であるわけだから、あえて「一の」と表記する必要はないと思われる。
(4) 4番目の太字の部分
「他の市町村……」に特別の意味はなく、書く必要はないだろう。
上記を踏まえると、次のように書くことが考えられる。

(県費負担教職員の任用等)
第40条 都道府県委員会(県費負担教職員(非常勤の講師(同法第28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める者を除く。以下同じ。)を除く。以下この条、第42条、第43条第3項、第44条、第45条第1項、第46条、第47条、第58条第2項、第59条及び第61条第2項において同じ。)の免職に関する事務を行う者及び他の市町村に係る県費負担教職員の採用に関する事務を行う者の一方又は双方が第55条第1項、第58条第1項又は第61条第1項の規定により当該事務を行うこととされた市町村委員会である場合にあつては、当該市町村委員会を含む。)は、地方公務員法第27条第2項及び第28条第1項の規定にかかわらず、県費負担教職員を免職し、引き続いてその者を他の市町村の県費負担教職員に採用することができるものとする。この場合において、当該県費負担教職員が当該免職された市町村において同法第22条第1項(……)の規定により正式任用になつていた者であるときは、当該県費負担教職員の他の市町村における採用については、地方公務員法第22条第1項の規定は、適用しない。