漢字で表記される言葉を平仮名とする手法

平成26年11月28日に公布された「まち・ひと・しごと創生法」は、「まち」、「ひと」、「しごと」という通常であれば漢字で表記される言葉を平仮名で記載している。これを漢字ではなく平仮名としたのは、「わかりやすさや親しみやすさを込めたということに加え、漢字では表現しきれないイメージを持たせようとしている」からであるが(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局参事官 溝口洋「まち・ひと・しごと創生法の法制的論点」『自治体法務研究(NO.40)』(P48)参照)、そのため採った手法について、前掲論文(P48)には次のように記載されている。

漢字があるにもかかわらず平仮名表記をする「まち」、「ひと」及び「しごと」、そして用例のない「創生」という単語、いずれもそのまま使うことは、内閣法制局の審査を通らない。そこで、「まち・ひと・しごと創生」を意味するフレーズを名詞で終わらせる形で書き下し、それを「まち・ひと・しごと創生」と定義するという手法を採ることとしたわけである。

その定義は、次のとおり、まち・ひと・しごと創生法第1条でなされている。太字の部分が定義となっている。

(目的)
第1条 この法律は、我が国における急速な少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくためには、国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営むことができる地域社会の形成、地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保及び地域における魅力ある多様な就業の機会の創出を一体的に推進すること(以下「まち・ひと・しごと創生」という。)が重要となっていることに鑑み、まち・ひと・しごと創生について、基本理念、国等の責務、政府が講ずべきまち・ひと・しごと創生に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための計画(以下「まち・ひと・しごと創生総合戦略」という。)の作成等について定めるとともに、まち・ひと・しごと創生本部を設置することにより、まち・ひと・しごと創生に関する施策を総合的かつ計画的に実施することを目的とする。

漢字があるにもかかわらず、平仮名で書きたがる言葉というものがある。上記のまち・ひと・しごと創生法第1条にもある「一人一人」という言葉も「一人ひとり」と書きたがる人が多い。もしもそのように使いたいのであれば、何か定義をしなければいけないということである。