なぜ読点を付けないのだろうか

読点の付け方は、一定の慣用はあるものの、その慣用に従うと、かえって条文の意味が不分明になるおそれがある場合等には、この慣用によらないことも認められる(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P650)参照)。
したがって、必ずしも間違いではないのだろうが、次の消防法第21条の16の6の規定には、なぜ読点を付けないのかと思う場所がある。

第21条の16の6 総務大臣は、販売業者等が第21条の16の2の規定に違反して、自主表示対象機械器具等を販売し、又は自主表示対象機械器具等のうち消防の用に供する機械器具若しくは設備を設置、変更若しくは修理の請負に係る工事に使用したことにより火災の予防若しくは警戒、消火又は人命の救助等のために重大な支障が生ずるおそれがあると認める場合において、当該重大な支障の発生を防止するため特に必要があると認めるときは、当該販売業者等に対し、当該自主表示対象機械器具等の回収を図ることその他当該自主表示対象機械器具等が一定の形状等を有しないことによる火災の予防若しくは警戒、消火又は人命の救助等に対する重大な支障の発生を防止するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

この規定の条件句について、最初の大きな条件を表している部分は、「又は」に着目するなどして読んでみると、「販売業者等が第21条の16の2の規定に違反して、自主表示対象機械器具等を販売し、又は自主表示対象機械器具等のうち消防の用に供する機械器具若しくは設備を設置、変更若しくは修理の請負に係る工事に使用したことにより」の部分と「火災の予防若しくは警戒、消火又は人命の救助等のために重大な支障が生ずるおそれがあると認める場合において」の部分に大きく区分けすることができる。そうすると、それぞれの部分の中で読点を付している以上、当然「……使用したことにより」の次には読点を付けるべきということになる。
ここに読点を打ったとしても、条文の意味が不分明になるおそれは、決してない。