天皇陛下の生前退位(その3)

インタビュー)退位のルール 元最高裁判事東北大学名誉教授・藤田宙靖さん
(略)
憲法は『皇位は(略)国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する』と定めています。退位を認めるには典範改正が必要だという主張がありますが、私は特別法でも可能であろうと考えます。憲法がいう『皇室典範』とは一種のカテゴリーであって、特別法やそれ以外の付属法令を含めたものをさすとの理解は不可能ではありません。また、そもそも今の陛下の退位という個別事例に限った立法が許されるのかとの議論もありますが、この点についても、平等原則など憲法がほかに定める規範に抵触しない限り、対象が個別的であるからといって、そのことだけから違憲だとは言えないでしょう」
「ただ、私が強調したいのは、退位を特別法によって実現しようとするのであれば、その法律は必ず、今後の天皇にも適用されうる法的ルールを定めたものでなければならないということです」
 ――なぜでしょうか。
憲法がわざわざ『皇室典範』と法律名を特定して書いている背景には、安定的な皇位継承のためには明確な法的ルールが必要であり、政治状況や社会状況に応じて、時の政権や多数派の主導による安易な代替わりがあってはならないという意味が込められていると考えるからです。皇位継承のあり方は政治にとって最もセンシティブな問題の一つです。かりに特別法が、『今上天皇は何年何月何日に退位する』といった内容の規定にとどまる場合、憲法の趣旨に反するものとして、違憲の疑いが生じると思います」
 (略)
朝日新聞デジタル2017年1月18日配信

個人的には、「『皇室典範』と法律名を特定して書いている背景には、安定的な皇位継承のためには明確な法的ルールが必要であり」云々という部分は、必然的にそうなるとは思えないのだが、いずれにしろ今後の天皇にも適用されうる法的ルールを定めるのであれば、特別法という選択肢はなく、皇室典範の改正という形になるのではないだろうか。
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