法律に基づく過料と条例に基づく過料―空家等特措法の規定から

北村喜宣ほか『空き家対策の事務』(P63〜)では、空家等特措法で過料を科す規定が設けられたため、既存の条例で過料の規定がある場合に、それを残しておくべきかどうかについて、法の横だし的行為に対するものは、過料の規定を残しておくことが考えられるとしている。
このこと自体は格別異論がないのだが、空家等特措法では、命令違反に対しては50万円以下の過料に処することとしているのに対し、条例では5万円以下とする規定しか設けられないため(地方自治法第14条第3項)、まずそうした不均衡がある。
さらに、空家等特措法に基づく過料は、非訟事件手続法に基づき裁判所の手続が適用されるのに対し、条例に基づく過料は、自治体の長の処分によることになるという、手続の違いに対する違和感もある。
法律で規定された以上、条例の規定は不要という判断かもしれないが、条例が先行している分野であるため、例えば次の介護保険法の規定にように、条例に委任することを考えてもよかったと感じる。

第214条 市町村は、条例で、第一号被保険者が第12条第1項本文の規定による届出をしないとき(同条第2項の規定により当該第一号被保険者の属する世帯の世帯主から届出がなされたときを除く。)又は虚偽の届出をしたときは、10万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
2 市町村は、条例で、第30条第1項後段、第31条第1項後段、第33条の3第1項後段、第34条第1項後段、第35条第6項後段、第66条第1項若しくは第2項又は第68条第1項の規定により被保険者証の提出を求められてこれに応じない者に対し10万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
3 市町村は、条例で、被保険者、第一号被保険者の配偶者若しくは第一号被保険者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者又はこれらであった者が正当な理由なしに、第202条第1項の規定により文書その他の物件の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず、又は同項の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたときは、10万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
4 市町村は、条例で、偽りその他不正の行為により保険料その他この法律の規定による徴収金(納付金及び第157条第1項に規定する延滞金を除く。)の徴収を免れた者に対し、その徴収を免れた金額の5倍に相当する金額以下の過料を科する規定を設けることができる。
5 地方自治法第255条の3の規定は、前各項の規定による過料の処分について準用する。

仮に条例が存しない自治体であっても、この程度の条例の制定であれば、負担もそれ程ではないのではないだろうか。