国における新旧対照表方式の実施状況

半鐘さん経由

明治以来の大改革を一歩ずつ
私が行革担当大臣を務めていた時に、霞が関文学の頂点ともいえる、そして国民が誰一人として理解できない、改め文(あらためぶん、またはかいめぶんと読みます)をやめて、わかりやすい新旧対照表による改正でやろうという音頭を取りました。
  (略)
改め文の方が分量が少ないという声もありますが、国民は改め文ではまったく意味が分からないため、新旧対照表などをいずれにしても作成しなければなりません。
そう考えると、改め文は、新旧対照表を作成したうえで、誰も読まない改め文を改めて作成し、しかも、それを作る「技術」を役所内で伝承するというわけのわからないことになっています。
法律改正を新旧対照表でやると、改正部分以外のところで誤植等があった場合に、法案を提出しなおさなければならなくなるのではないかという恐れが霞が関内に強くあり、では、国会審議のない省令改正からやろうということになりました。
国民へのわかりやすさと霞が関働き方改革の2つの観点から、国会も新旧対照表での改正への対応が必要だと思います。
  (略)
衆議院議員 河野太郎 公式サイト

例規の一部改正の技術の習得自体は、1年もあれば可能と思われるのだが、それを明治以来の大改革とは、あまりにも大袈裟な表現のように感じる。それはともかく、上記記事には、自民党の行革推進本部と政府の行革事務局で各省庁の府省令の改正方式を調査した結果として、次のとおり、平成28年3月25日から同年12月31日までの間に新旧対照表方式を用いて官報掲載された件数とそれに対する各省庁の考え方が記載されている。

<新旧対照表方式を用いて官報掲載された件数>*1
内閣府4件(5%)、公正取引委員会10件(77%)、国家公安委員会30件(65%)、金融庁1件(1%)、消費者庁10件(50%)、財務省3件(2%)、厚労省6件(2%)、農水省1件(0%)、経産省2件(1%)、国交省14件(5%)、環境省15件(18%)、原子力規制庁2件(17%)
内閣官房人事院宮内庁、復興庁、総務省法務省、外務省、文科省及び防衛省は、0件)
<新旧対照表方式に関する各省庁の考え方>
内閣官房法務省:新旧で困難、不可能、支障を生じるものはない。
人事院内閣府公正取引委員会:新旧だと分量が増える。
国家公安委員会:原則として新旧で行っている。
金融庁:他省庁と共管のものが多いので混乱する。
消費者庁:改正して施行前のものをさらに改正するものだったため、条文の番号だけが変わるものだったため、国民に分かりやすくするために改め文にした。新旧だと分量が増える。
復興庁:すでに官報原稿を入稿していたもの、全部改正に近いものだったため、国民にとってのわかりやすさのために改め文や新旧ではなく、改正後の別表のみ、すべて官報に載せた。
総務省:新旧だと分量が増える。複数省令を束ねた場合の対応方法が不明であり対応できなかった。なお、総務省では本年度中に新旧での改正の実施を見込んでいる。 外務省:新旧対照表による改正を前向きに検討中
財務省租税特別措置法のように年度内の法律との同時公布に間に合わせるために、新旧対象法を作成していない。外為法に基づく北朝鮮への経済制裁のように、至急に対応が必要な場合に留意する必要がある。
文科省:多くの省庁の省令等の改正方式との共通性の確保の観点から適切性を判断しがたい。小中学校、高校、大学のように法令の読解に十分な知見を有しない多数の機関が参照するため、省令と法律の改正方式が異なると混乱が生じる恐れがある。
厚労省:改正内容が簡潔で、入稿枚数が少ないものから積極的に実施していく。
農水省:上位法令における取り扱いにあわせる観点から新旧対照表方式はやらないこととしている。
経産省:法律および政令の改正に必要な改め文方式のノウハウの伝承という観点から省令等においても改め文方式を採用することに意義があると考えた。国民へのわかりやすさや行政事務の効率化の観点から新旧対照表方式を順次導入していきたい。 国交省平成28年4月28日に新旧対照表で省令改正を行い、以後、可能な限り新旧対照表で行うこととしている。
環境省:昨年の6月1日に省令の改正は新旧対照表で行うという法令改正のルールを省内で施行
原子力規制庁:?
防衛省:もともと法令の立案件数が少ない防衛省で、省令の改正を新旧対照表による改正で行うと、法律及び政令に係る立法技術が低下し、法令の立案過程でミスを生じさせる可能性が高まることを懸念。一方で、国民にとっての改正内容を分かりやすくすることの重要性も理解しており、引き続き、新旧対照表による改正を検討する。

河野議員は、上記記事を「明治以来の大改革となる改め文の廃止ですが、一歩ずつ進んでいこうと思います」と締めくくっているが、果たして進展があるのだろうか。

*1:括弧内は、官報掲載された全件数に対する割合である。