禁止事項を届け出させる意味

富士山の冬季登山届 静岡県強調、義務化検討は「窮余の策」
静岡県は原則禁止として自粛を呼び掛けている富士山の冬季登山について、登山届の提出義務化に向けた検討に近く着手する。担当者は14日、静岡新聞社の取材に対し、冬季登山容認への方向転換と誤解される可能性があるとして「冬山は登らないでとの立場は変わらない」と改めて説明。「登山届は万全な準備の証明に有効。救助の手がかりになる」として、登山者が後を絶たず事故が相次ぐ実情を踏まえた窮余の策と強調した。
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富士山は7〜9月の夏山期間以外、静岡県側では富士宮、御殿場、須走の各登山道にフェンスを設置し、通行を禁じている。ただ、登山道以外の斜面から登ることは可能。県は適正利用推進協が策定したガイドラインに沿い、万全な装備がない場合の登山禁止や登山計画書の作成・提出、携帯トイレの持参なども呼び掛けるが、強制力や罰則規定はなく、実効性が課題となっていた。
静岡県に先行し、山梨県は10月、「県登山の安全の確保に関する条例」を公布。2019年10月までに、厳冬期(12月1日から3月31日まで)の富士山8合目以上と南アルプス、八ケ岳の山域での登山届提出を条例によって義務化する。
静岡県でも条例による義務化が検討される見通し。山梨県の条例が観光振興を目的の一つに掲げ、観光部が担当するのに対し、静岡県では登山者の遭難防止や安全確保の側面から危機管理部が中心となって進める方向。危機管理部は義務化などのスケジュールについて「山梨県の条例が完全施行される19年度をめどに対応したい」との考えを示す。
ただ、山梨県の条例に罰則規定はなく、実効性が課題である点は条例以前と変わらない。静岡県でも罰則規定の必要性は議論になると予想され、危機管理部の担当者からは「実効性の確保については、最終的に登山者のマナーに期待するしかない」との本音も漏れる。
静岡新聞 11月15日配信

条例をどのように書くつもりなのか分からないが、原則禁止と言ってみたところで、条例で届出を義務付ける以上、当該行為を認めたことにならざるを得ないだろう。
 埼玉県では、防災ヘリコプターの運行については手数料を徴収することとしているが(2017年4月7日付け記事「防災ヘリコプターの運行業務の有料化」参照)、個人的にはこのように金銭を徴収する方向が望ましいのではないかと思っている。
例えば、登山者から一律に入山料のような形で徴収することを考えるとすると、黙認にしろ登山を認めることになるが、それを登山道の整備等の財源にするのであれば、分担金(地方自治法第224条参照)として徴収することはできるだろう。しかし、対象者をきちんと捕捉し、徴収できるかは疑問がある。
登山禁止を前提とするのであれば、それにもかかわらず登山したことにより公的な救助を受けた場合、それにより利得を得たとして課徴金的なものを納付させることも考えられる。しかし、現行の制度では、自治体は課徴金を納付させることはできないと考えるべきであるから、立法論ということになってしまうだろう。