号(上)

幾つかの事項を列記する場合に用いる号は、「次に掲げる○○」として1つの号に1つの事項を列記したり、「次の各号に掲げる○○の区分の応じ当該各号に定める○○」として1つの号に2つの事項を列記したりする。
しかし、号の用いられ方は、それらに限られない。いろいろな号の書き方を確認しておくことは、それなりに有益と思われるので、今回と次回であまり見ることのない号の書き方を見てみることにする。
<事例1>

平和条約国籍離脱者等である戦没者遺族等に対する弔慰金等の支給に関する法律
(公務傷病の範囲)
第5条 (略)
2〜4 (略)
5 次の各号に規定する者当該各号に該当した場合には、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなす。
(1) 第3条第1項第3号又は第4号に掲げる者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合
(2) 第3条第2項の規定により同条第1項第4号に該当するものとみなされる者が抑留期間内に自己の責めに帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかった場合において、総務大臣が業務上負傷し、又は疾病にかかったものと同視することを相当と認めたとき。
(3) 第3条第1項第5号、第7号若しくは第11号に掲げる者が業務上負傷し、若しくは疾病にかかり、又は同項第8号に掲げる者が昭和20年8月9日前に軍事に関し業務上負傷し、若しくは疾病にかかり、若しくは同日以後に業務上負傷し、若しくは疾病にかかった場合
(4)・(5) (略)
6・7 (略)

この事例は、柱書きでは号で2つの事項を列記するとしていながら、号の中では1文としている例である。第1号のような項目だけなら、上記の2つの事項を列記する一般的な書き方とすることもできるだろうが、第2号や第3号はそのように書き難いので、このような書き方にしたのではないだろうか。
なお、この柱書きは、厳密に言えば言葉が足りない文章である。柱書きは、単に「次に掲げる場合には、……」としてもいいのだが、そうするとそれがはっきりするだろう。
<事例2>

国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)
(費用負担の原則)
第99条 組合の給付に要する費用(前期高齢者納付金等及び後期高齢者支援金等、介護納付金並びに基礎年金拠出金の納付に要する費用並びに組合の事務に要する費用を含む。第3項において同じ。)のうち次の各号に規定する費用は、当該各号に定めるところにより政令で定める職員を単位として、算定するものとする。この場合において、第3号に規定する費用については、少なくとも5年ごとに再計算を行うものとする。
(1) 短期給付に要する費用(前期高齢者納付金等及び後期高齢者支援金等の納付に要する費用並びに長期給付(基礎年金拠出金を含む。)及び福祉事業に係る事務以外の事務に要する費用(第四項の規定による国の負担に係るもの並びに第六項及び第七項において読み替えて適用する第四項の規定による特定独立行政法人の負担に係るものを除く。)を含み、第三項(第二号を除く。)の規定による同項に規定する国等の負担に係るものを除く。次項第一号において同じ。)については、当該事業年度におけるその費用の予想額と当該事業年度における同号の掛金及び負担金の額とが等しくなるようにすること。
(2)〜(3) (略)
2 (略)
3 国又は独立行政法人造幣局独立行政法人国立印刷局若しくは独立行政法人国立病院機構(第102条第3項において「国等」という。)は、政令で定めるところにより、組合の給付に要する費用のうち次の各号に規定する費用については、当該各号に定める額を負担する。
(1) 育児休業手当金及び介護休業手当金の支給に要する費用 当該事業年度において支給される育児休業手当金及び介護休業手当金の額に雇用保険法の規定による育児休業給付及び介護休業給付に係る国庫の負担の割合を参酌して政令で定める割合を乗じて得た額
(2)  (略)
4〜7 (略)

この事例は、第1項と第3項でともに2つの事項を号で書いているのだが、第3項は、上記の一般的な書き方をしているのに対し、第1項は、号の中を1文としている。第1項は、「当該各号に定めるところにより」としているので、一般的な書き方がそぐわないと判断したのではないかと思われる。