「です・ます調」の条例〜「みんなで取り組む健康長寿条例案」

washitaさん経由

です・ます調」条例で意見募集 静岡県議の2提案
静岡県議会はこのほど、議員提案による「みんなで取り組む健康長寿条例」案と「県子どもいじめ防止条例」案をまとめた。いずれも理念的な条例案で、今月23日まで県民に意見募集(パブリックコメント)をしている。みんなで取り組む健康長寿条例は制定されれば、前文、条文ともすべて「です・ます」調の丁寧体で表記した初の県条例となる。
県議会は両条例案の検討委員会をそれぞれ設け、4月から協議してきた。みんなで取り組む健康長寿条例案は県民一人一人に健康長寿への取り組みを呼び掛ける内容で、「県民が親しみやすい条例に」との狙いから表記に丁寧体を採用した。第7条に「県民の役割」を記し、健康づくりに向けて「社会奉仕や地域貢献などに積極的に参加します」「食材の地産地消を心掛け、食生活を楽しみます」などとうたう。
(中略)
条例案の検討委はパブリックコメントに寄せられた意見を踏まえて改めて協議し、12月定例会での条例案提出を目指す。
議員提案による県条例は、改正案も含めこれまでに「がん対策推進条例」など11件ある。
静岡新聞 2016年10月8日配信

上記記事によると、条例案を「です・ます調」にした理由は、県民が親しみやすい条例にする狙いからとのことであり、それ以上の意味は、記事からは読み取れない。
しかし、次の条例案における「県民の役割」の規定を見ると、通常の「である調」の場合における規定を「です・ます調」にしただけの規定にはなっていない。

(県民の役割)
第7条 県民は、健康への関心を持ち、自らの心身の状態等に応じた健康づくりに積極的に努めます。
2 県民は、社会奉仕や地域貢献などの活動に積極的に参加します。
3 県民は、日々の生活の中で、健やかな運動を実践します。
4 県民は、食材の地産地消を心掛け、食生活を楽しみます。
5 県民は、地域行事等の社会参加に努め、地域の絆を大切にします。
6 県民は、健康診断等を定期的に受診し、自らの心身の状態の把握に努めます。

例えば上記の第2項は、通常であれば「県民は、社会奉仕や地域貢献などの活動に積極的に参加しなければならない」とし、県民に義務付けをする規定とするところである。これを単純に「です・ます調」にするのであれば、「県民は、社会奉仕や地域貢献などの活動に積極的に参加しなければなりません」となるが、条例案によると県民が自ら社会奉仕活動等に参加することを宣言する規定となり、通常の条例の規定とは異なった意味を持つものとなる。
そうした規定を条例とすることの適否はあえてここでは触れないが、この書き振りが意図したものであるのなら、この条例案の位置付けは、県、県民、その他関係者の共同宣言的なものということになるのだろう。そうすると、全体の書き振りが不適切となっていることもさることながら、当然その立案を県民等と共同して行ったというプロセスが必要となり、単にパブリックコメントをする程度では不適切であることは言うまでもないだろう。
結果として、何を目指した条例なのかよく分からないものとなってしまっており、失礼ながら、条例としては奇をてらって失敗した例であろう。
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