自治体の組織(3)〜執行機関(その2)

長の事務を行政委員会に行わせること、及び行政委員会の事務を長に行わせることについては、地方自治法に次のとおり委任又は補助執行に関する規定がある。

地方自治法
第180条の2 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部を、当該普通地方公共団体の委員会又は委員と協議して、普通地方公共団体の委員会、委員会の委員長、委員若しくはこれらの執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員に委任し、又はこれらの執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員をして補助執行させることができる。但し、政令で定める普通地方公共団体の委員会又は委員については、この限りでない。
第180条の7 普通地方公共団体の委員会又は委員は、その権限に属する事務の一部を、当該普通地方公共団体の長と協議して、普通地方公共団体の長の補助機関たる職員若しくはその管理に属する支庁若しくは地方事務所、支所若しくは出張所、第202条の4第2項に規定する地域自治区の事務所、第252条の19第1項に規定する指定都市の区の事務所若しくはその出張所、保健所その他の行政機関の長に委任し、若しくは普通地方公共団体の長の補助機関たる職員若しくはその管理に属する行政機関に属する職員をして補助執行させ、又は専門委員に委託して必要な事項を調査させることができる。ただし、政令で定める事務については、この限りではない。

したがって、前回の「自治体の組織(2)〜執行機関(その1)」で取り上げた場合については、当該施設について、博物館の部分と公文書館の部分とを切り分けて、後者については条例上は長の権限とした上で、委任又は補助執行により教育委員会又は教育長等に事務を行わせることは可能であろう。
ところで、委任や補助執行は、上記の規定からすると、長と議会との間ではできないことになる。その場合には、兼務という形でとることで対応することが可能となろう(なお、兼務に関する規定である地方自治法第180条の3は、長の職員が行政委員会の職員と兼務する場合しか規定していないが*1、それ以外の場合であっても兼務は可能であると解されている(行実 昭和41.10.26参照)。)。
国の場合には、分担管理原則(国家行政組織法第5条第1項)*2がとられ、兼務も制限されている*3。それに対し、自治体がなぜ委任・補助執行・兼務ができるようにしているかというと、小西敦ほか『地方自治の機構』(P306)には、次のように記載されている。

執行機関が分立する中で、地方公共団体全体としての組織及び運営の効率化を図るためには、それぞれの執行機関の事務部局の重複、肥大化を避けることが重要である。

このことを、地方には国ほど人材がいないから、人材の有効活用をするためであるといったようなことを書いていた文献もあったと思う。こうした考え方はともかくとして、これらの手法があることにより、例えば長の事務を他の執行機関に行わせることについて、それなりにもっともな理由を付けることができれば、どのような事務であっても可能なので、柔軟な対応ができる半面、執行機関を分けている意味があまりなくなっていることは事実であろう。
ただ、これらの手法が上記のとおり自治体の組織及び運営の効率化といった観点から認められているということを意識するとともに、他の執行機関の事務を行う場合には、これらの手法による必要があるということを意識していることが必要だと思う。

*1:地方自治法第180条の3は、「普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の委員会又は委員と協議して、吏員その他の職員を、当該執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員と兼ねさせ、若しくは当該執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員に充て、又は当該執行機関の事務に従事させることができる。」としている。

*2:国家行政組織法第5条第1項は、「各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法 (昭和22年法律第5号)にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を分担管理する。」とされている。

*3:国家公務員法第101条第1項は、「職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。」とし、兼務ができる場合は、人事院規則8−12(職員の任免)第21条第1項に定められている。