法令で委任された事項を定める例規〜消防法第9条の2第2項(5)

(「ある自治体の条例について考える」の続き)
5 条例第29条の5(政令第5条の7第1項第3号及び省令第6条に対応)

(設置の免除)
第29条の5 前3条の規定にかかわらず、次の各号に掲げるときは、次の各号に定める設備の有効範囲内の住宅の部分について住宅用防災警報器又は住宅用防災報知設備(以下この章において「住宅用防災警報器等」という。)を設置しないことができる。
(1) 第29条の3第1項各号又は前条第1項に掲げる住宅の部分にスプリンクラー設備(標示温度が75度以下で作動時間が60秒以内の閉鎖型スプリンクラーヘッドを備えているものに限る。)を令第12条に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したとき。
(2) 第29条の3第1項各号又は前条第1項に掲げる住宅の部分に自動火災報知設備を令第21条に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したとき。
(3) 第29条の3第1項各号又は前条第1項に掲げる住宅の部分に共同住宅スプリンクラー設備を特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号。以下「特定共同住宅等省令」という。)第3条第2項第2号に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したとき。
(4) 第29条の3第1項各号又は前条第1項に掲げる住宅の部分に共同住宅用自動火災報知設備を特定共同住宅等省令第3条第2項第3号に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したとき。
(5) 第29条の3第1項各号又は前条第1項に掲げる住宅の部分に住戸用自動火災報知設備を特定共同住宅等省令第3条第2項第4号に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したとき。

 (1) 政省令とは規定する位置が異なっているが、規定する内容から考えると、ここで書くことでいいのではないかと思う。
 (2) 政令第5条の7第1項第3号の「第1号に掲げる住宅の部分に」がどこまで係っているのか疑義があるところである。読点の打ち方及び省令第6条の規定からすると、「スプリンクラー設備……又は自動火災報知設備」にしか係っていないと見るのが素直な感じがするが、条例では「その他の」の後の「当該設備」にも係っているという前提で書いている。これは、確認を要する事項だと思うが、とりあえず後者と考えておく。
そうすると、政令と省令の書き方がやや複雑なので、合理的に書くためには「次の各号に掲げる〜当該各号に定める」というように、多少書きぶりを変えた方がよいであろう。
 (3) 号の建て方は、省令よりも細分化しているが、とりあえず、省令にならうことにする(1(3)「法令で委任された事項を定める例規〜消防法第9条の2第2項(2)」参照)。
6 条例第29条の6(政令第5条の8に対応)

(基準の特例)
第29条の6 第29条の2から第29条の4までの規定は、住宅用防災警報器等について、消防長が、住宅の位置、構造又は設備の状況から判断して、これらの規定による住宅用防災警報器等の設置及び維持に関する基準によらなくとも、住宅における火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、住宅における火災による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。

 (1) 見出しは、その内容から端的に「適用除外」というようにした方が適当であろう。
 (2) 引用条文は、第29条の5までとした方がいいのではないか。
 (3) 「住宅用防災警報器等について」という用語は、政令第5条の8に「住宅用防災機器について」とあるから書いたのだろうが、同条とは文章の内容が異なっている。同条の「住宅用防災機器について」は「当該条例の規定の適用の除外に関する規定」につなげて読むのだろうが、条例の「住宅用防災警報器等について」はうまくつながらない。この用語は不要であろう。
7 条例第29条の7

(住宅における火災の予防の推進)
第29条の7 ○○市は、住宅における火災の予防を推進するため、次に掲げる施策の実施に努めるものとする。
(1) 住宅における出火防止、火災の早期発見、初期消火、延焼防止、通報、避難等に資する住宅用防災機器その他の物品、機械器具及び設備の普及の促進
(2) 住民の自主的な防災組織が行う住宅における火災の予防に資する活動の促進
2 住民は、住宅における火災の予防を推進するため、第29条の3第1項に定める住宅の部分のほか、台所その他の火災発生のおそれが大であると認められる住宅の部分における住宅用防災警報器等の設置に努めるものとする。

この規定は、法第9条の2第2項の「その他住宅における火災の予防のために必要な事項」を受けて書いているのだと思うが、省令には該当する規定が見当たらない。何か参考にしたものがあるのかもしれないし、強制力のある規定ではないので、書こうが書かまいがどちらでもいいことのだが、私だったら、まず削ることを持ちかけると思う。
とりあえず、気になる点を掲げておく。
 (1) 第1項は、火災の予防を推進するための施策を書いているわけである。そうすると、第1号の「火災の発見」以下は予防ではないので、用語として適切でない。
 (2) 第2項の「第29条の3第1項に定める住宅の部分のほか、台所その他の火災発生のおそれが大であると認められる住宅の部分における住宅用防災警報器等の設置に〜」の部分は「台所その他の火災発生のおそれが大きいと認められる住宅の部分にも住宅用防災機器を設置するよう〜」といった形にするのだと思う。
8 改正条例附則第1項(改正法附則第1条第2号に対応)

(施行期日)
1 この条例は、平成17年12月1日から施行する。ただし、第3章の次に次の1章を加える改正規定は、平成18年6月1日から施行する。

 (1) 「第3章の次に次の1章」は「第3章の次に1章」とする。
 (2) 改正条例附則第2項の施行日は、平成18年6月1日とする。
9 改正条例附則第2項(改正法附則第2条に対応)

(経過措置)
2 この条例の施行の際、現に存する住宅(改正後の○○市火災予防条例(以下この項において「新条例」という。)第29条の2に規定する住宅をいう。以下この項において同じ。)における同条各号に掲げる住宅用防災警報器若しくは住宅用防災報知設備(以下この項において「住宅用防災警報器等」という。)又は現に新築、増築、改築、移転、修繕若しくは模様替えの工事中の住宅に係る住宅用防災警報器等が新条例第29条の2から第29条の5までの規定による住宅用防災警報器等の設置及び維持に関する基準に適合しないときは、当該住宅用防災警報器等については、平成21年5月31日までの間、これらの規定は、適用しない。

改正法附則第2条を書き写しているが、同条で、条例で定める日まで関係規定は適用しないと言っているのだから、「改正法附則第2条に規定する(の)条例で定める日」を定めれば足りるのである。
 次回は、これまでの記載を踏まえた規定例を示すこととしたい。