条文の箇条書き

もちろん、こうしたギルド的な言葉の世界*1に対して批判も多い。言葉の閉鎖性が市民から法律や条例を遠ざけているとの批判ももっともである。批判はそのとおりであるが、批判をするときは対案を示すというのが私の立場である。
具体例で考えてみよう。
「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従業者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」地方公務員法第24条第3項の規定である。
私ならば、「職員の給与は、(1)*2生計費、(2)国や他の地方公共団体の職員の給与、(3)民間事業の従業者の給与、(4)その他の事情を考慮して定められなければならない」という箇条書き方式が、とりあえずの対案である。こんな条文があってもいいのではないだろうか。皆さんの忌憚のない意見をいただきたい。(松下啓一『自治体政策づくりの道具箱』(P157〜)

意見というほどのものではないのですが、私ならこの地方公務員法第24条第3項をどのように書くか考えてみることにします。
と言っても、「生計費……その他の事情」という部分を箇条書きにするという考え方は基本的には賛成でなので、発想は同じになってしまいます。そして、条文で箇条書きにするということなので、号で書き下ろすことを考えます。
やや悩むのは「その他の事情」という語句をどうするかです。これが「その他の○○の事情」となっていればそのまま各号の中で書くのですが、「その他の事情」となっているため、そのまま書くのはどうも座りが悪く感じます。
思うに、この規定は、職員の給与を定める場合には、「生計費……給与」のほか、これらに類する諸々の事情を考慮すると考えるのでしょうから、あえて「その他の事情」とはせずに「等」で括ってしまっても問題はないでしょう。
また、この規定は、事情の例示として生計費等を列挙していますが、生計費等を示すのに「事情」という言葉を用いるのは、私はやや違和感を持つので、「事項」くらいでいいのではないかと思います。
そうすると、次のようになります。

職員の給与は、次に掲げる事項等を考慮して定められなければならない。
(1) 生計費
(2) 国及び他の地方公共団体の職員の給与
(3) 民間事業の従業者の給与

ちなみに、松下先生は、上記の第2号の部分を「国や他の地方公共団体の職員の給与」とされていますが、やはり「や」を用いるのは抵抗を感じます。ただし、地方公務員法全体を見て「や」を使用しても差し支えないのであれば、こだわりませんけれども。

*1:「及び・並びに」等の法制執務における独特な用語使い方を指していると思われる。

*2:原文は丸数字である。以下同じ。