検察協議

やや間があいてしまいましたが、2010年1月22日付け記事「罰金と過料(下)」の注記で記載した検察協議のことに触れることにします。
千代田区生活環境条例における路上喫煙に対する規制については、当初は罰金とすることが考えられていたため、その立案の過程で検察との協議が行われているが、その内容について、財団法人日本都市センター『行政上の義務履行確保等に関する調査研究報告書』(P139)では、次のように記載されている。

検察は、刑罰法規全体のなかでのバランスや構成要件の重なりなどの視点から、より理論的な整備を求めて来た。例えば、「ポイ捨てに3万円以下の罰金」としていた部分について「廃棄物の処理及び清掃等に関する法律」第16条の「みだりにゴミを捨てる罪」と構成要件が重なるという指摘をいただいた(渋谷区や新宿区等ですでに同様の直罰規定を設けていたことからすると、千代田区としてやや意外な指摘ではあった)。

私が見聞した事例でも、当然検察協議を行っていると思われる他の自治体の条例の規定にある書きぶりであっても、その修正を求められ、実際に修正したこともあった。
また、「みだりに」という用語を用いたところ、その意味が不明確であるから適切でないという指摘を受けたことがある。しかし、この用語は、法律レベルでも使用されているので(例えば、軽犯罪法第1条第7号など)、修正することなく了解していただいたこともあった。
これらの経験から、個人的には、検察協議においては、ほとんど担当検事の裁量によっているのではないかという印象を持っている。
なお、検察協議について、兼子仁ほか『政策法務事典』(P233)では、次のように記載されている。

その(検察協議のこと)*1趣旨は、条例で創設する罰則の構成要件が明確かどうかを確認し、警察、検察が条例に基づき立件することが可能かどうかを判断することである。もちろん、条例が達成しようとする目的、そのための作用(行政行為)に比して、刑罰の程度が比例原則に適っているかどうかも重要なポイントとなろう。

上記のうち、構成要件の明確性という点については異論はないのだが、比例原則という点については、そもそも条例で定めることができる刑罰の上限はあまり重くはないので、それ程意識する必要はないのではないかと感じている。

*1:括弧内は管理人注記