定義規定を項で書く場合と号で書く場合の基準

総則規定として置かれる定義規定の書き方は、項で書く場合、つまり「この条例において「○○」とは、……をいう。」とするものと、号で書く場合、つまり「この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。」という柱書きを書き、次に各号を列記するものがある。
定義規定を項で書くか、号で書くかについては、明確な基準はないが、多くの用語を定義する場合は号で書くことが多いとされており(大島稔彦『法令起案マニュアル』(P197)参照)、一般的に定義する用語の数を基準とするものと考えられている。
しかし、法律の定義規定を見ると、号で書いた場合にその細分を用いなければならないような場合は、定義する用語の数が多くても項で書いているように思われる。
このことを窺わせるような記載が、佐藤達夫法制執務提要』(第二次改定新版)にある。そこには、次のように記載されている。

多くの用語を定義する場合には、「この法律において「何々」とは、「何々」をいう。」という規定を数項にわたつて並べることもあるが、これは、それらの各項の内容が複雑で、ただし書や各号がつくようなときに、特に意味のあるやり方であつて、通常は、次のような方式が用いられる。

(例1)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 (1) 国内 この法律の施行地をいう。
 (2) 国外 この法律の施行地外の地域をいう。
 (3) 居住者 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。
 (4) 非居住者 居住者以外の個人をいう。
 (中略)
 (47)還付加算金 国税通則法第58条第1項(還付加算金)に規定する還付加算金をいう。
(例2)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 (1) 職員 常時勤務に服することを要する国家公務員をいう。
 (2) 被扶養者 次に掲げる者で主として組合員の収入により生計を維持するものをいう。
  イ 組合員の配偶者(届出をしていないが、事実婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫、祖父母及び弟妹
  ロ 組合員と同一の世帯に属する三親等内の親族で前号に掲げる者以外のもの
  (以下略)

前掲書は、号で書くことが原則としているが、複雑になるときは項で書く場合があるとしており、その例として号の細分を用いなければならない場合が挙げられるのではないだろうか。
そうすると、例2の場合は、第2号で号の細分が用いられているので、項で書いてもいい事例と言えるだろう。