「及び」と「又は」

「及び」と「又は」の使い分けは、理屈上は明確であるが、実際には迷う場合も多い。本来であれば「及び」を使うべきところ、「又は」にしていたり、その逆のケースも多い。
では、私自身どのように考えて使い分けをしていたか、次の下水道法施行令の規定を取り上げて、少し触れてみることにする。

(公共下水道に設ける施設又は工作物その他の物件に関する技術上の基準)
第17条 法第24条第2項に規定する政令で定める技術上の基準は、次のとおりとする。
(1)  (略)
(2) 施設又は工作物その他の物件の構造は、次に掲げるところによること。
イ〜ニ (略)
ホ 流入施設、建築基準法第42条に規定する道路、鉄道、軌道及び専ら道路運送車両法 (昭和26年法律第185号)第2条に規定する自動車又は軽車両の交通の用に供する通路以外のもので、公共下水道の開渠部分の壁の上端から2.5メートル未満の高さで当該部分に突出し、又はこれを横断するものの幅は、1.5メートルを超えないこと。
(3)〜(6) (略)

便宜上「又は」を使っている部分から触れる。「自動車又は軽車両の交通の用に供する通路」の「又は」は、いわゆる「及び・又は」の「又は」であるが、これを「及び」とすると「自動車と軽車両の両方の交通に要する通路」を意味することになり、「自動車の交通の用にのみ供する通路」や「軽車両の交通の用にのみ供する道路」は除外されることになってしまうので、適切でないことは明らかだろう。仮に「及び」にしたいのであれば、「自動車の交通の用に供する通路及び軽車両の交通の用に供する通路」と書くことになる。
「……突出し、又はこれを横断するもの」の「又は」も同様で、これを「及び」とすると、「突出し、かつ、これを横断するもの」といった意味になってしまう。これも「及び」にするのであれば、「……突出するもの及び当該部分を横断するもの」と書くことになる。
これに対し、「及び」を使っている部分は、「流入施設」、「道路」、「鉄道」、「軌道」、「自動車又は軽車両の交通の用に供する通路」が「以外のもの」に係っているのであり、これら5つのものを除外する意であるから、「及び」とすることになる。しかし、「又は」としても、適切とは言い難いが、上記のように意味が変わってしまうことはない。
つまり、「及び」と「又は」に迷ったら「又は」にした方が無難であることが多いことになる。