条例で規則へ委任することを規定することについて

条例において、「〜については、規則で定める」というような形で細目的な事項に関する定めを規則に委任することはよく行われているし、そのことについて特に疑問を呈している見解は見たことがない。
国における命令は、委任命令又は執行命令という形でしか制定することができないため、命令の形式を明示して委任するのは当然とも思える*1
しかし、規則は、あくまでも条例とは別個の法形式であることを考えると、規則を定めることの一義的な判断は長が行うべきであるのではないだろうか。したがって、細目的な事項について定めることを委任する場合は、規則と明示して委任するのではなく、長に対して委任し(つまり、「〜については、知事(市長)が定める」とする)、委任を受けた長がどのような形式で定めるか選択するようにすることを原則とすべきと思う。
また、「この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。」といった補則規定を見かけるが、この場合は、条例に規定した事務は、通常は長の事務であることが明らかであろうから、地方自治法15条1項の規定により長は規則を定めることができるため、書かずもがなの規定であるように思う(この場合は、当然「〜知事(市長)が定める」と書く必要もないことになる。)。
条例を立案する場合、法律の規定の例を参考にする部分が大きいが、国との制度の違いなどを考えると、その規定をそのまま持ってくることに抵抗を感じたことが時々あったことの1つの例である。

*1:奥平康弘『行政判例百選Ⅰ(第4版)(P111)』には、「現在の法体系のもとで、法律が特定の法形式を指定することなしに『命令』という文言を用いて、立法委任することを黙認していいのだろうか。国会は、委任の対象・範囲を特定するばかりでなく、委任立法を制定すべき機関を特定することも、憲法上要請されているのではなかろうか。」と記載されている。