届出制とその規制手法について(その3)

その2」では、許可制の対象となる行為等と届出制の対象となる行為等の性格の違いから、規制内容についても一線を画さなければならない部分があると記載した。それが、「その1」で引用した大塚直『環境法(第2版)』にもあるように、原則としては届出の対象となる行為を止めることはできないということになる。
このことを景観法の規定を取り上げて見てみることにする。

景観法(抄)
(届出及び勧告等)
第16条 景観計画区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令‥‥で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を景観行政団体の長に届け出なければならない。
(各号略)
2 (略)
3 景観行政団体の長は、前2項の規定による届出があった場合において、その届出に係る行為が景観計画に定められた当該行為についての制限に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる。
4〜7 (略)
(変更命令等)
第17条 景観行政団体の長は、良好な景観の形成のために必要があると認めるときは、特定届出対象行為(前条第1項第1号又は第2号の届出を要する行為のうち、当該景観行政団体の条例で定めるものをいう。第7項及び次条第1項において同じ。)について、景観計画に定められた建築物又は工作物の形態意匠の制限に適合しないものをしようとする者又はした者に対し、当該制限に適合させるため必要な限度において、当該行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを命ずることができる。この場合においては、前条第3項の規定は、適用しない。
2 前項の処分は、前条第1項又は第2項の届出をした者に対しては、当該届出があった日から30日以内に限り、することができる。
3・4 (略)
5 景観行政団体の長は、第1項の処分に違反した者又はその者から当該建築物又は工作物についての権利を承継した者に対して、相当の期限を定めて、景観計画に定められた建築物又は工作物の形態意匠の制限に適合させるため必要な限度において、その原状回復を命じ、又は原状回復が著しく困難である場合に、これに代わるべき必要な措置をとることを命ずることができる。
6〜9 (略)
(行為の着手の制限)
第18条 第16条第1項又は第2項の規定による届出をした者は、景観行政団体がその届出を受理した日から30日‥‥を経過した後でなければ、当該届出に係る行為(根切り工事その他の政令で定める工事に係るものを除く。第102条第4号において同じ。)に着手してはならない。ただし、特定届出対象行為について前条第1項の命令を受け、かつ、これに基づき行う行為については、この限りでない。
2 (略)

景観法は、第18条第1項で行為の着手制限を定めているが、それは第17条第1項の変更命令を出す期限である届出から30日を経過する日までの間とされている。つまり、当該変更命令の規定があるから当該着手制限の規定を置いていることになる。仮に変更命令の規定がないと、一定の期間に限って着手制限の規定を置くにしても、何のためにその規定を置くかという説明がしにくいであろう。
届出制を採る場合には、今のところは、この景観法のような仕組みが最も厳しい規制内容であると考えて、部分的にマイナーチェンジをしていくことになるのではないだろうか。例えば、景観法では、比較的ストレートに変更命令を出すことができることになっているが、その前に勧告を行うことができるようにするとか……。
ところで、景観に関する規制というと、公表というものが思い浮かぶ。景観法が制定される以前の自治体における景観条例の規制は、勧告を行い、それに従わない場合には公表するというような仕組みにしていたところが多いかと思う。では、景観法のような仕組みにした場合に公表という制度を取り入れることが考えられるであろうか。これについては、次回に記載することとしたい。