続・新旧対照表方式(1)〜メリット・デメリット(その1)

1月25日付けの記事で記載したように、今回から8回にわたって、再び新旧対照表方式について記載していきたい。
このシリーズでは、島田真紀子氏*1が記載した「条例等の改正における新旧対照方式(鳥取県方式)の導入について」『法令解説資料総覧236号』を引用することが多いので、これを島田・論文と表記する。また、一般に用いられている改め等方式について、島田・論文では「従来方式」と呼んでいるので、ここでも同じ言葉を使うことにする。なお、一部改正例規において新旧対照表を用いた改正方式のことを、島田・論文では「新旧対照方式」と呼んでいるが、ここでは、論文をそのまま引用する場合を除いて「新旧対照表方式」という言葉を使うことにする。
また、新旧対照表方式を導入している市町村の公報の閲覧が容易ではないため*2都道府県におけるものを中心に取り上げ、適宜市町村におけるものを取り上げていくことにする。
では本論に入るが、まず新旧対照表方式を導入するメリット・デメリットについて考えてみたい。島田・論文によると、この方式を最初に導入した鳥取県においては、その導入に当たって、全部改正方式*3、新旧対照表方式、その他を検討対象とし、従来方式とそれぞれの案のメリット・デメリットの検証を行ったとのことであるが、その内容を要約すると、次のとおりである。
1 従来方式
 (1) メリット
  ・ 改正文の短さ
  ・ 全国的に統一され、確立された方式であるために、改正作業に通じた職員や法令編纂者(出版社)にとって、画一的に安心して作業ができる。
(2) デメリット
  ・ 分かりくい。
  ・ 改正方法のルールが細かい。
2 全部改正方式
 (1) メリット
  ・ 改正後の条文内容が一目で分かる。
  ・ この方式は、従来方式においても用いられていた方法であり、改正方式に紛れがない。
  ・ すべての改正が同様の方法で対応できるため、複雑な改正のルールを覚える必要がない。
(2) デメリット
  ・ 改正箇所が分かりにくい。
3 新旧対照表方式
 (1) メリット
  ・ 改正箇所、改正内容及び改正後の条文内容が一目で分かる。
  ・ 参考資料として作成していた新旧対照表及び従来方式による改め文の作成が不要になり、事務の簡素化が図られる。
(2) デメリット
  ・ 改正の効力に疑問があるのではないか。
  ・ 改正方法について検討が必要である。
  ・ 分量が少なくとも数倍の分量になる。
4 その他
  改正方式は従来方式のままで、議案や公報に新旧対照表も併せて掲載する。
 (1) メリット
  ・ 分かりやすさといった面では、新旧対照方式と同等のメリットがある。
  ・ 改正方式は従来通りであるから、方法論でも疑問が少ない。
(2) デメリット
  ・ 新旧対照表と従来方式の改め文を併せて掲載した場合に、議員や県民の方がどちらを見るかというと前者であり、改め文は無駄なものとなってしまい、無駄な物を作成することは、事務の簡素化に逆行する。
  ・ 新旧対照表も改め文も位置付けがあいまいで、中途半端になる。
以上のように検討した結果、「分かりやすさ」に重点をおき、かつ、その中で一番無駄を排除して考えた結果として、新旧対照表方式に軍配があがったとしている。
では、新旧対照表方式が、本当に従来方式を変更する程適当な方式なのか、次回以降で考えてみることにしたい。

*1:当時、鳥取県総務部総務課法制室長

*2:私がホームページで確認できたのは、那覇市だけであった。

*3:全部改正方式とは、改正される文言のある条項等について、「第○条第△項を次のように改める」という改め文を置き、行を変えて改正後の規定を書くという形で、全部改正してしまう方式である。すなわち、従来方式において条等を全部改正する場合と同様の方法をすべての場合に用いる方式である。