読替規定における略称等の使い方

読替規定における略称等の使い方について、法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P197〜)には、A法においてB法を準用し、必要な読替えをA法の中で書く場合に、A法において用いられている略称をそのまま用いることができるかどうかということと、読替規定中でA法を引用する場合に、その法律番号まで引用しなければならないのかということについて記載されている。
これらに関する立法例は分かれているが、それは、前者に関してであるが、次のように準用についての考え方の相違によるものとされている。

A法中のある事項についてのB法の準用であり、A法中において読替規定を書くとはいっても、A法の外にあるB法の読替えであるから、A法で定義された字句なり、A法で用いられている略称なりをそのまま用いるのは疑問であるという考えと、B法の読替えだとしても、A法中で書くことであり、A法における事項への当てはめであるから、これらをそのまま用いても差し支えないとする考えとがあった。(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P198)

そして、同書では、前者については、A法における略称をそのまま用いない取扱いに統一されつつあるとし、後者については、法律番号を入れない取扱いに統一されつつあるとしている。
これは、矛盾しているようにも思えるが、後者の場合には疑義を生ずるおそれがないと考えているということなのであろう。
では、A法においてB法を準用し、その読替規定に引用した法律の略称を置いた場合において、A法の他の規定で同様の読替規定を置いたときに、当該規定でその略称をそのまま用いることができるだろうか。これについても、次に掲げるように両方の例がある。

<例1>
協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成5年法律第44号)
(優先出資引受権)
第6条  (略)
2〜4  (略) 
5 商法(明治32年法律第48号)第280条ノ4第3項(新株引受権の割当期日等)及び第280条ノ5(新株引受権の通知及び失権)の規定は優先出資引受権について、同法第280条ノ6ノ2(新株引受権証書の発行及び方式)、第280条ノ6ノ3第2項(新株引受権証書の即時取得等)及び第280条ノ6ノ4(新株引受権証書発行の場合の申込み)の規定は優先出資引受権証書についてそれぞれ準用する。この場合において、同法第280条ノ4第3項中……「第224条ノ3第1項」とあるのは「協同組織金融機関の優先出資に関する法律(以下優先出資法ト称ス)第25条ニ於テ準用スル第224条ノ3第1項」と、同法第280条ノ5第1項中……「第280条ノ2第1項第6号及第7号」とあるのは「優先出資法第6条第2項第2号及第3号」と、同法第280条ノ6ノ2第1項中「第280条ノ2第1項第6号」とあるのは「優先出資法第6条第2項第2号」と、……同条第二項中……「前条」とあるのは「優先出資法第9条第2項」と、……同法第280条ノ6ノ4第1項中「第175条第1項及第3項」とあるのは「優先出資法第9条第1項」と読み替えるものとする。
(優先出資の発行についての商法の準用)
第14条 商法第178条(払込取扱機関の変更)……の規定は、優先出資の発行について準用する。この場合において、同法第178条中「前条第1項ノ払込ヲ取扱フ銀行若ハ信託会社」とあるのは「優先出資法第9条第2項第10号ニ掲グル金融機関」と……読み替えるものとする。
<例2>   
飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部を改正する等の法律(平成15年法律第74号)
   附 則 
(規格設定飼料の製造業者等に関する経過措置)
第7条 この法律の施行の際現に旧法第4条第2項の規定に基づき検定に関する業務の一部(規格適合表示を付することを含む。以下同じ。)を行っている規格設定飼料の製造業者(新法第29条第1項の登録を受けた者を除く。以下この条において同じ。)については、施行日から1年を経過する日までの間は、旧法第4条第2項、第5条、第5条の2、第7条、第24条及び第24条の3(これらの規定に係る罰則を含む。)の規定は、なおその効力を有する。この場合において、旧法第4条第2項中「検査所、都道府県又は前項の農林水産大臣が指定した者」とあるのは、「都道府県又は飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部を改正する等の法律(平成15年法律第74号。以下「改正法」という。)附則第6条の規定により改正法による改正後の飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律第27条第1項の登録を受けているものとみなされた者(その者が引き続き同項の登録を受けた場合を含む。)」と読み替えるほか、これらの規定に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。
2 この法律の施行の際現に旧法第7条の2第1項の規定に基づき検定に関する業務の一部を行っている規格設定飼料に係る外国製造業者(新法第30条第1項の登録を受けた者を除く。以下この条において同じ。)については、施行日から1年を経過する日までの間は、旧法第7条の2から第7条の5まで、第24条及び第24条の3(これらの規定に係る罰則を含む。)の規定は、なおその効力を有する。この場合において、旧法第7条の2第1項中「検査所又は第4条第1項の農林水産大臣が指定した者」とあるのは、「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部を改正する等の法律(平成15年法律第74号。以下「改正法」という。)附則第6条の規定により改正法による改正後の飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律第27条第1項の登録を受けているものとみなされた者(その者が引き続き同項の登録を受けた場合を含む。)」と読み替えるほか、これらの規定に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。
3・4 (略)

この事例は、準用に関する考え方というよりも、A法の複数の規定におけるB法の準用を一連のものと考えてよいのかどうかということに関係してくることなのだろう。そして、考え方としてはどちらもありだと思うが、例2のように扱う方が、疑義が生じるおそれがないし、形式的に考えることができるので適当ではないかと感じる。