常用漢字でない漢字を2回以上用いる場合の振り仮名

現在、常用漢字表の改定が話題になることがあるが、例規において常用漢字でない漢字を用いる場合には、振り仮名(ルビ)を付けることとされている。
ルビを振るべき漢字を2回以上用いる場合に、2回目以降はルビを振らなければいけないかどうかについては、以前kei-zuさんが取り上げていた記事(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20061026)(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20090625)が参考になるが、同記事でも取り上げられていた、上田章ほか『条例規則の読み方・つくり方(第2次改定版)』(P213)では、次のように記載されている。

かつては、法令文において当該用語が登場するたびに振り仮名(ルビ)を付けていたが、最近の新規立法例においては、初出の際に1回だけ振る例が多い。古い法令の一部改正の場合には、その法令における用例に従い、毎回振ることになる。

このルビを振るべき漢字が2回以上用いられた場合のルビの振り方の例について、2点程取り上げる。なお、この記事でルビは、漢字の後ろに括弧書きにして表すことにする。
1 条のほか、章名や見出しにも使われている場合の例
ルビを振るべき漢字が、条以外に章名や見出しにも使われている場合のルビの振り方の例として、次の民法における「失踪」の例がある。

第4節 不在者の財産の管理及び失踪(そう)の宣告
   (略)
失踪(そう)の宣告)
第30条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪(そう)の宣告をすることができる。
2  (略)
失踪の宣告の効力)
第31条 前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

この例では、条の第1回目、節名の第1回目、見出しの第1回目にそれぞれルビが振られている。前掲書で、初出の際に1回だけ振る例が多いとあるが、それは、この民法の例でいうと、条、章名、見出し等の区分ごとに考えるということになるであろう。
2 2回目以降のルビを削った例
前掲書では、古い法令の一部改正の場合には、その法令における用法に従い、毎回振ることになるとしているが、「激甚(じん)災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令(昭和37年政令第403号)」の一部を改正する政令で、次のように、2回目以降の用語のルビを削った例がある。

激甚(じん)災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成22年政令第123号)
  (略) 
第20条第1項中「激甚(じん)災害」を「激甚災害」に、「こえる」を「超える」に改め、同条第2項を次のように改める。
(略)

「激甚(じん)災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令」において、「激甚災害」の用語の初出は、次の第1条の規定である。

(特定地方公共団体の基準等)
第1条 激甚(じん)災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(以下「法」という。)第3条第1項の政令で定める基準に該当する都道府県又は市町村は、その年に発生した激甚災害(法第2条第1項の規定により激甚災害として指定され、かつ、同条第2項の規定により当該事項に係る法の規定の適用が指定された災害をいう。以下同じ。)に係る法第3条第1項各号に掲げる事業ごとの当該都道府県又は市町村の負担額を合算した額の当該激甚災害が発生した年の4月1日の属する会計年度における当該都道府県又は市町村の標準税収入(法第4条第1項第1号の標準税収入をいう。以下同じ。)に対する割合が都道府県にあつては100分の10、市町村にあつては100分の5を超えるものとする。
2 (略)

この政令は、古い法令であるため、当初は「激甚災害」の用語全てにルビが振られていたのだろうが、現在の第1条は、初出の際のみルビが振られており、原則どおりとなっている。しかし、その後の条は、平成22年政令第123号による改正後でも、第4条はルビを振られていないが、第5条は振られているなど、混在している。そして、当該用語がある条の改正の際に、初出のもの以外のルビは削ることとしているようであり、その意味では、振り仮名を直す場合と同様の扱いとしている。