直罰と間接罰の基準に関するメモ

行政刑罰は、法令の違反行為があった場合に直ちに適用することとする場合と、法令違反行為に対し命令を前置し、当該命令違反の場合に適用することとする場合とがある。前者を直罰、後者を間接罰というが、どういう場合にどちらが採用されるかについて、北村喜宣「行政罰・強制金」磯部力ほか『行政法の新構想2』(P135〜)に記載があるので、ここにメモしておく。

  • 直罰とする場合
    • 行政庁が命令の発出に慎重になるがゆえに被害の拡大が懸念される場合 ex.水質汚濁防止法の排水基準規制(第12条・第31条第1項第1号)
    • 命令の履行が容易であるがゆえに違反が再発してしまう場合 ex.廃棄物処理法の屋外焼却規制(第16条の2・第25条第1項第15号)(処理基準違反である屋外焼却行為に対しては、同法2000年改正までは、間接罰)
    • 違反による実害リスクが高いと認識される場合 ex.消防法の危険物規制(第39条の2)
  • 間接罰とする場合
    • 義務内容が一義的に明確でない(構成要件が明確でない)場合 ex. 大気汚染防止法の粉じん規制(第18条の3・第18条の4・第33条の2第1項第2号)
    • それほどの悪質性・非難可能性が認められない場合 ex.騒音規制法の規制基準違反(第5条・第12条・第29条)、大気汚染防止法の揮発性有機化合物規制(第17条の9・第17条の10・第33条)
    • 違反の成立に一定時間の経過を要する場合 ex.水質汚濁防止法の総量規制(第12条の2・第13条第3項・第30条)
    • 履行の期待可能性がない場合 ex.土壌汚染対策法の土壌状況調査・報告義務(第3条第1項・第3項・第38条)
    • 「保育行政」的性格が強い場合 ex.消防法の特定防火対象物規制(第17条の4・第41条第1項第4号)