共通見出し

消費者基本法の第5条の前には、次のとおり同条から第8条までの共通見出しが置かれている。

(事業者の責務等)
第5条 事業者は、第2条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にかんがみ、その供給する商品及び役務について、次に掲げる責務を有する。
(1) 消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること。
(2) 消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
(3) 消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること。
(4) 消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。
(5) 国又は地方公共団体が実施する消費者政策に協力すること。
2 事業者は、その供給する商品及び役務に関し環境の保全に配慮するとともに、当該商品及び役務について品質等を向上させ、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成すること等により消費者の信頼を確保するよう努めなければならない。
第6条 事業者団体は、事業者の自主的な取組を尊重しつつ、事業者と消費者との間に生じた苦情の処理の体制の整備、事業者自らがその事業活動に関し遵守すべき基準の作成の支援その他の消費者の信頼を確保するための自主的な活動に努めるものとする。
第7条 消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない。
2 消費者は、消費生活に関し、環境の保全及び知的財産権等の適正な保護に配慮するよう努めなければならない。
第8条 消費者団体は、消費生活に関する情報の収集及び提供並びに意見の表明、消費者に対する啓発及び教育、消費者の被害の防止及び救済のための活動その他の消費者の消費生活の安定及び向上を図るための健全かつ自主的な活動に努めるものとする。

これは、議員立法として提出され成立した「消費者保護基本法の一部を改正する法律(平成16年法律第70号)」において設けられたものであるが、田口義明「かくして『消費者の権利』法定へ−消費者基本法制定への道程」新堂幸司『日本法の舞台裏』(P116)によると、消費者に関する規定の見出しを、これまでどおり「役割」とするか「責務」とするか問題となり、「努力」とか「努め」という代案も検討されたが、結局共通見出しという手法で解決したとのことである。
大したことではないように思えるが、基本条例の制定過程において、責務規定の書き方についてこだわりを持つ人がいてもめるケースを経験したことがあるため、どこも同じようなことがあるのだと感じたところである。
ところで、この共通見出しを付す平成16年法律第70号の改め文は、次のようになっている。

第4条の見出しを「(事業者の責務等)」に改め、同条第1項中……に改め、同項に次の各号を加える。
(中略)
第4条第2項中……に改め、同条を第5条とし、同条の次に次の4条を加える。
(以下略)

ここは、条の見出しを共通見出しとするわけだから、次のようにすべきだろう。

第4条の見出しを削り、同条第1項中……に改め、同項に次の各号を加える。
(中略)
第4条第2項中……に改め、同条を第5条とし、同条の前に見出しとして「(事業者の責務等)」を付し、同条の次に次の4条を加える。
(以下略)