2009-01-01から1年間の記事一覧

「新旧対照表方式の意義と展望」

松下啓一先生が、『自治体法務研究』に「新旧対照表方式の意義と展望」を掲載されています。松下先生には、この論文において、このブログの関連記事も含め過分なお言葉をいただいていますが、私自身、勉強をさせていただくよい機会を得たものと思っています…

非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて・追記(下)

今回は、2009年5月15日付け記事「非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて・追記(中)」の末尾に記載したとおり、私が大津地裁判決に疑問を持っている点について記載する。それは、次のとおりである。 1 立法趣旨を強調し過ぎている点 大津地裁…

6月の期末・勤勉手当に係る改正条例の規定

6月の期末・勤勉手当について、改正給与法の附則第2条の規定に相当する規定を設けるべきかどうか議論されているようです。大勢としては不要だとする意見が多いようですが、少し異を唱えてみます。 まず、その改正法における規定を次に掲げます。 (期末手…

非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて・追記(中)

前回(『非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて・追記(上)』)、2009年1月30日付け記事について反省する面があると記載したが、それは、国における行政委員会の委員等の給与についてあまり確認していなかったので、結果として大津地裁判決に…

非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて・追記(上)

以前取り上げた(2009年1月30日付け記事「非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて」)非常勤の行政委員の報酬を月額制とすることを違法とする大津地裁平成21年1月22日判決(以下次回も併せて「大津地裁判決」という。)について、その全文を見…

許可等の基準の書き換え(下)

前回(「許可等の基準の書き換え(上)」)取り上げた条例の書き方は、条例に規定する地下水保全協定で定められる地下水の水質を保全するために必要な事項としては、第13条第1項各号及び第2項各号で定める許可基準と別な事項を横だし的に定めることは想定…

許可等の基準の書き換え(上)

ある規定に定められた許可等の基準について、特定の場合に別の規定で書き換えることがある。例えば、次のような規定がある*1。 *1:山本博史『行政手法ガイドブック』で取り上げられているものである。

枝条を含む連続する4以上の条の移動

連続する4以上の条を移動する場合には、まず最後尾のものを「第○条を第△条とし」という形で移動を行い、他の3以上の条はまとめて移動する(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P459)参照)。 例えば、第4条から第7条までを2条ずつ繰り下げる場…

設置の根拠が法令にある機関を引用する際に、当該法令の規定を引用する必要があるのか

設置の根拠が法令にある自治体の機関を引用する場合に、当該法令の規定を引用しているものとそうでないものがある。例えば、次の規定のように、児童相談所については、法令の規定が引用されていないが、知的障害者更生相談所については、知的障害者福祉法の…

今回は……

大分前になるのですが、設置の根拠が法令にある機関を引用する際に、当該法令の規定を引用する必要があるのかについて、kei-zuさんのブログ(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060208)で議論されていました。 このことについて幾つか法令の規定を見ていて感…

新旧対照表方式〜導入自治体の意見から(その2)

例規の改正方式について新旧対照表方式を導入している自治体の職員の方の意見については、2008年8月15日付け記事「新旧対照表方式〜導入自治体の意見から」で少し取り上げましたが、次のとおりtihoujitiさん(http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20090329)が…

飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について(5・最終)

(「4 まとめ」の続き) (2) 2つの判決に共通する判断に対する疑問 2つの判決は、懲戒処分というものは、その処分に係る行為の道路交通法等における罰則の重さに比例すべきという考え方にとらわれているようである。もちろん、そのような面があることは否…

飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について(4)

4 まとめ (1) 2つの判決における判断の相違点 裁判官がどのような思考経路をたどって判断するのかということは、裁判官ではない私が軽々に言うことはできないのだが、論点ごとに結論を決めた後に結論を決めるのではなく、裁判の過程を通じてある程度直感的…

飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について(3)

3 神戸地裁平成20年10月8日判決 (1) 事案概要 被処分者は、市の建設経済部の課長である。 被処分者は、平成19年5月6日(日)、町役員に草刈り機の操作方法を説明するため、河川堤防の草刈作業現場に立ち会った。 その後、自宅に戻っていたが、上記草刈り…

飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について(2)

2 佐賀地裁平成20年12月12日判決 (1) 事案概要 被処分者*1は、高等学校の教諭である。 平成18年7月13日、ホテルで開催された自身の所属する高校の運営委員会の反省会に参加したが、高校から会場へは車で移動した。 この反省会で飲酒し、その後スナックにお…

飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について(1)

最近、飲酒運転をした者に対する懲戒免職処分を取り消す判決が地裁レベルで幾つか出されている。この問題については、2007年8月12日付け記事「飲酒運転をした者を懲戒免職処分にする処分指針について」で取り上げたこともあるので、再び取り上げてみる。 取…

増補方式……的な改正

例規の一部改正の方式である増補方式とは、「ある既存の法令の内容の一部を追加、修正、削除する法令は、それが成立したあとも改正対象となった既存の法令の中にはとけこまずに、そのままの形のものとしてあとまで存続し、既存の法令に対する増補の形で、あ…

地球温暖化対策における自治体の役割

地球温暖化対策に関し、自治体においても条例を制定する例があるが、かねてから私は、地球温暖化対策は地域における事務(地方自治法第2条第2項参照)とはいえず、自治体が条例を定めて取り組むような事項ではないのではないかと感じていた。ただ、「地球…

論理的な文章〜目的規定から

文章は、論理性がないと説得力が感じられない。例えば、最近、テレビなどで経済危機について取り上げられることが多いのだけれども、少し前になるが、1月28日のテレビ朝日系「サンデープロジェクト」に、自民党を離党した渡辺元行革大臣が出演し、その中で…

非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて

行政委員の報酬、「月額制」ダメ 滋賀県に差し止め命令滋賀県が労働、収用、選挙管理の各行政委員会の委員に支払う報酬をめぐり、毎月定額を支給するのは地方自治法に違反するとして、滋賀弁護士会の吉原稔弁護士(68)が、県に報酬を支払わないように求めた…

いわゆる「渡り政令」について

公務員制度改革:「渡り」政令に与野党から批判の声国家公務員OBが省庁のあっせんで天下りを繰り返す「渡り」を、首相の承認で可能とした政令について、与野党から批判する声が強まっている。自民党の石原伸晃幹事長代理は19日、「党に相談しなかった手続…

新旧対照表の分かりやすさとは(下)

3 分かりやすさを理由として新旧対照表方式を導入することの是非 例規の一部改正の方法として新旧対照表方式を導入することに関する私の考え方は、あえて否定も肯定もするものではないが、これは以前と変わっていない(2008年3月1日付け記事「続・新旧対…

新旧対照表の分かりやすさとは(中)

(「1 議員にとっての新旧対照表の有用性」の続き) 次に、自治体における取扱いであるが、新旧対照表を資料として議会に提出している自治体もあるということはよく耳にすることである。他方、議会に提出していない自治体も相当数あるであろう。 条例案につ…

新旧対照表の分かりやすさとは(上)

新旧対照表は、例規の規定のどこが変わるか、またその規定がどのように変わるのかといった観点からみると、改め文よりも分かりやすいということは否定できない。 しかし、そのことから直ちに改正方式まで新旧対照表方式に改めべきということになるのであろう…

告知

とりあえず、次回からまた新旧対照表のことを取り上げてみたいと思っています。これは、2008年12月6日付けの記事にいただいた新旧対照表の分かりやすさに関する御意見に対し、新旧対照表の分かりやすさから例規の形式を改めることについて自分の意見を書い…

謹賀新年

あけましておめでとうございます。 このブログを始めて2年半程が経過しました。ブログを始めた理由は、2006年9月30日付け記事で書いているように、どちらかという内向きのものであり、引継書的なものとすることを想定していました。そして、法制執務を解説…